第15話 イカの正体

「はぁ、疲れた」


 狐の魑魅魍魎に襲われ、巨大化したイカが暴れる。


 そんな事態を何とか解消したシュクは、もろもろの始末を警察官達に任せて下宿先のマンションにたどり着いた。


 警察官達はシュクに色々と話を聞きたそうにしていたが、荷物だけ返してもらってその場を去ったのだ。


「約束させてよかった……」


 シュクは荷物を返してもらうという話の際に、どさくさに紛れて『明日から学校に通えるようにしてほしい』という約束も取り付けていた。


 その約束を盾にして、シュクは解放されたのである。


 その開放感とともに、シュクは、伸びをしながら備え付けのソファに座る。


 どうやら新品のようで、人が使ったような匂いはしない。


 さすがに掃除をする気力は残っていなかったので、助かったと胸を撫で下ろす。


「お前も、さっさと変身を解いたらどうだ?」


 シュクは、小さくなっているイカに話しかける。


「イカァ」


「その姿だと、声帯が違うからイカとして言えないんだろ?」


「イカァ……」


 シュクに殴られてぐったりとしていたイカの体が微かに光る。


 そして、小さな銀色の狐の姿に変わった。


 これが本来のイカの姿だ。


「ふぅー……まったく、酷いことをする」


「しょうがないだろ? 妙な変身のせいで色々コントロールができなくなるお前が悪い。ギンコ」


 先ほどまでイカで、今は銀色の小狐であるギンコは、不満そうに鼻を鳴らす。


「妙な変身ではない。あの姿は我が完全体になるための、崇高な……」


「九尾に戻るために、十本の触手があるイカに変身すればいいのではないか? いやーなんという天才の発想! もしかしたら九尾を超えて十尾になってしまうかもしれんなぁ! ガハハハ……だったか? なるか馬鹿」


「うるさい!! そもそもお前はもう少し我を敬わんか! 我は九尾! 魑魅魍魎を従える大妖ぞ!!」


「今は小さな小狐だけどな」


 きゃんきゃん吠えるギンコをシュクは笑い飛ばすのだった。







 

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