第10話 変なのがまた出て来た
次の日、気休めで中華の毛をポケットに入れて牡丹宅へ出発した。俺は何となく気になり運転手に質問してみた。
「今日は風呂入って来たんですが、やっぱりシャワーはやらないとダメっすか?」
「はい決まりですので。私共も入っております。」
「ふーん。ちなみに今日の俺って昨日の俺と何か違って見えたりしません?」
「…どうでしょうか。私はそういう事には疎いので。」
何だ。やっぱり中華の毛はただの犬の毛玉か。今朝はいつもの様に俺に懐いていた。本当に何かあるのではないかと思ったがそんな事ある訳ないか。
牡丹邸に着いて改めて見るとすごいの一言しかでない。
「本日はお嬢様は病院での検査の為お戻りになられるのは遅くになりますので、切りの良い所で上がられてください。」
「あ、はあ。てかポスターを家の周りに貼りたいんですがそれはOKですか?」
「私ではお答えする事が出来ませんので、教祖様にお聞きいただいてもよろしいでしょうか。」
あああ。これはめんどくさいパターンだ。別に何も聞かず勝手に出た方がいいわ。何か言われたらみーちゃんを見かけた人が居たとかなんとか言えばいいか。
「あ、はーい。そうしまーす。」
俺は軽く返事をしてシャワールームへ向かった。それにしても本当に立派な家だ。どうやったらこんな金を稼げるんだ?占いが当たってとか言ってたけどどんだけ当たるんだよ。なんて思いながらふと廊下の壁に掛かってる写真に目をやると牡丹の家族写真があった。父親、母親、双子の兄妹それと牡丹。母親と牡丹が余りにも似すぎて驚いた。それに母親が異様に若かったのだ。亡くなったと聞いて勝手に年配なのかと思っていたが違った。父親はまあ普通のおっさんといったところだが双子の兄妹は妖精の様だ。このおっさんの血が入っているのか疑わしいほど父親には似ていない。どう見ても。牡丹の家系の遺伝だ。
「おっさん。なんか可哀想だなこりゃ。」
俺はそう言いながら豪華なシャワールームへ入った。明らかに高級そうなボディーソープをこれでもかという程に手に出してワシャワシャと贅沢に体を洗った。鼻歌を歌いながらシャワールームから出ると一人の小汚い老婆が俺の服を何かブツブツ言いながら漁っていた。
「おい!何してんだよ!」
俺は素っ裸でその老婆に声をかけた。老婆は手を止めるとこちらをゆっくりと見た。その薄気味悪さに顔をしかめた。
「あんた、どこから迷い込んで来た。誰に言われて来たんじゃ。」
ああもう。またクソ面倒なのが出て来たよ。ちゃんと説明しとけよな。
「俺はここの牡丹ちゃんに居なくなった猫のみーちゃんを探しに来てるの。教祖さんの許可もとってあるし。」
「みーちゃん?あの猫はもうとっくに死んどるわ。」
この婆さんボケてんのか。違う猫と勘違いしちゃってるんだな。ほんと面倒だからスルーでいいか。俺は特に何も答えずに服を着始めた。流石に婆さんとはいえ素っ裸はダメだろう。
「あんた、どこから迷い込んで来た。誰に言われて来たんじゃ。」
婆さんは同じ事をまた繰り返し聞いて来た。これはちょっと気持ち悪いから早めにこの場所を離れよう。もう何も言わずに急いで服を着た。すると中華の毛玉をふわりと落としてしまった。
「あ、やべ。」
ゴミを落としてそのままにして何か言われるのも嫌だから拾おうとした時に婆さんが、素早い動きで中華の毛玉を取った。俺は心臓が飛び出しそうなほどに驚いてしまった。
「な、なんだよ。別にわざと落としたわけじゃないんだから…。」
婆さんは俺の言い訳を無視して食い気味に話しかけた。
「お前、これであの悪魔を殺すのか?お前みたいなひよっこ直ぐ消されるぞ。あの悪魔は生きていてはならない。あんな悪魔を生み出したワシ等ももう終わりじゃ。」
婆さんは俺を睨みながらずっとそんな事を繰り返している。ボケてるにしても言っている事が恐ろしくて気持ち悪い。
「何なんだよ。婆さんはこれが何か分かるのかよ。」
俺は止めておけばいいのに質問をしてしまった。
「これは犬の毛じゃ。」
いや。見たらそれは分かるだろ。怖がって損したと俺は少しほっとした。
「はいはい。ゴミ落としてごめんね。それちゃんと捨てとくからさ。」
手を伸ばし婆さんから毛玉を貰おうとした。
「お守りとか言われて持って来たんだろ。そうだな持っておいた方がいい。まあこれだけでは、あの悪魔には勝てんがな。」
婆さんはそう言うと毛玉を手渡した。俺はその時にとてつもない恐怖を感じた。この婆さんは何か気付いているのか。何か見えているのか?
「何言ってんのか意味わかんねえんだけど。」
少し腹立たしさも感じながら答えた。
「…中華か…。」
俺はその言葉に鳥肌が立った。この婆さんは一体何者なんだ。
「ああ!こんな所に居た!部屋に帰りますよ。」
その時脱衣所のドアががらりと開き一人の男性が入って来た。
「あ、すいません。みーちゃん探しの探偵さんですよね。失礼します。」
「え、あ、いえ。大丈夫です。」
その男性は俺をチラチラ見ながら婆さんをどこかへ連れて行った。
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