美少女処女吸血鬼の私物はよく取られがち(3/3)
オレが水無月かさごに紛失物についての相談をしてから、数時間後。
水無月学園での授業は全て終わり、学園にこれと言った用事もなかったので日が出るよりも早くに水無月学園の学園寮に戻ったオレは水無月かさごによって、ダンボール箱を1つ目の当たりにされていた。
「はい、夜宮。母に相談してアンタの無くした下着を全部見つけてあげましたよ。感謝なさい」
「お、おぅ……」
文脈から察するにこのダンボール箱の中に女体化してしまったオレが使っていた下着類があるのだろう。
それにしても、まさか彼女に相談して数時間足らずで事件解決に至るだなんて夢にも思わなかった……理事長先生もとい真祖様々である。
色々と引っ掛かる事があるかないかと言えば間違いなくあるのだが……まぁ、目の前にいる少女がオレが想像しているような変態みたいな事をする訳ないだろうし、そういう事に関しては深く考えない事にして、彼女からダンボール箱を受け取ろうとして――。
「ストップ。ストップです、夜宮。まさかその下着を使うつもりです?」
「使えるなら使うつもりだが」
何はともあれ、日本在住の吸血鬼であれば極力関わりたくないであろう理事長先生が動いてくれたのだから、これ以上オレの所有物が紛失する事件は起こらないだろう。
それに以前の生活習慣というものは悲しい事に中々に抜け落ちないようであるらしく、すっかり節制癖が付いてしまっているオレは当たり前のように再利用する気満々だったのだが、そんなオレを見て水無月かさごはドヤ顔で……いや待て、どうして今ドヤ顔をしてるんだ、この女?
「はー。やれやれです。これだから童貞は。いいですか? アンタがいくら綺麗な男だとしてもそれは昔の話。今のアンタは綺麗な処女。そんな処女の下着が盗まれたんですよ? 女性の下着ですよ? これ絶対に変態の仕業ですし犯罪行為だろう事は想像に難くないでしょう?」
まるで台本でも読むかのようにすらりすらりと言葉を発する彼女だが、言わんとしている事は何となく分からないでもない。
「それは、まぁ、言われてみれば、確かに……?」
「でしょう? それなのに再利用するんです?」
「……いやいや、脅すのは止めろ……」
「とにもかくにも、です! これは処分しましょう!」
「……まぁ、そういうのは一目確認して、使えそうなヤツだけ選別すればいいだろ。全部捨てるのは勿体ないだろ」
「そういうわざと使えそうなヤツを犯人は誘導している可能性も無きにしも非ずでしょう? そういう下着に限ってマイクロチップ形式の暗視カメラがあるんですよ、多分」
「いや、多分って」
「じゃあそういう能力を持っている変態吸血鬼って事で。いいんですか? 下着を着たその瞬間に変態吸血鬼に変態行為されても」
「いや、じゃあって」
「あー! もー! ぐだぐだ言わない! そういう訳でアンタの下着は私が責任持って処分します! いいですね!?」
始めからそういう結論に至るのなら、どうしてそのダンボールをわざわざ用意したのだろう? 最近女になったばかりのオレには女の考える事がとかく分からなかった。
とはいえ、そのダンボール箱を愛おしそうに抱きしめている彼女を見ていると不思議な事にとやかく言えない……いや、オレの下着が入っているのであろうダンボール箱に向ける表情じゃないよな、それ。
「ま、これ以降、紛失案件が消えるって言うのならオレとしてはありがたい限りだけどな」
「そう言えば、ダンボール箱の中を勝手に見たんですけど……夜宮、アンタは女性の下着とか履かないんです?」
一体全体、いきなり何を言い出すのだろうか、この変態処女厨吸血鬼は。
「……いや、いくら女になったからって、そういう事をするのは流石に、その、確かに今のオレの身体は女だろう。だが、心まで女になった訳じゃないんだが?」
「折角女の子になったんですから、そういう事をしないのは余りにも勿体ないですよ? 夜宮ったら見た目は本当に完璧なお嬢様なんですから、可愛い下着とか似合いそうですけどね」
「それはどーも。でもオレは見た目だけで充分だ。下着なんていう見られねぇところまでお洒落する気には毛頭なれねぇよ」
あくまでそういう言い訳だ。あくまでそういうスタンスでいる事をオレは崩さない。
例え、オレが本当に女の子になってしまったからと言って、本当にそういう事をしてしまえば、色々と取り返しのつかない事になりそうだから、オレは絶対にしない。そう決めている。
「それに、だ。オレの身体は生憎と女子だ。男性のまま女装をしろって訳じゃねぇ。そういう下着を好き好んで着用する女性がこの多様性社会には必ず存在するだろうし、その中の1人が偶々オレだっただけだろう?」
流石にここまで理論的に言えば、いくらあの水無月かさごでも口を閉ざしてくれるだろう――そう思っていたのだが。
「……折角、夜宮の為に下着を買ってきたのに……」
若干、わざとらしく、しょんぼりとしている彼女の姿が目に入り、オレの良心という良心にぐさりと棘のような刺突物が突き刺さって離れてくれない。
「み、水無月……?」
「……夜宮が困るだろうから、私のお小遣いで新品の下着を買ってきてあげたのに……」
何を勝手な事をしてくれるのだ――そう言えるほど、オレの心は薄情でも冷酷でもなかった。
しかし、だからと言って、彼女の買ってきた下着を着用するだなんて、いや、もしかすると希望的観測にはなるのだが、元男性の現女性でも着用できるようなデザインの下着を購入してくれているかもしれない……いやいや、先ほど彼女が述べた言葉から察するに……“可愛い下着”である事は確定事項なのだろう。
「……ごめんね、夜宮。私、勝手な事をして……」
「い、いや待て、水無月」
だけども、オレの口は勝手に動いてしまう。
絶対に動いてはいけないというのに、口が勝手に動いてしまった事にどうしようもない程の後悔に駆られてしまって、それでも彼女に停止を促してしまったオレに対して、水無月かさごは何かを期待していないようで期待しているような顔を浮かべてくる。
「……夜宮?」
「いや、その、だからっ……! 折角のテメェからのプレゼントなんだから、貰わないっていうのは、その、悪いと思って……」
「――ふふ、ちょろい」
「……水無月?」
「ありがとうって言ったんですよ、夜宮?」
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「ちょ、ちょっと待て水無月……!? 何だよ、この下着……!? ま、待て! いくらオレが美人で美女だからと言っても心まで女になった訳じゃないからっ……! こ、こんなの絶対に着る訳ないだろ……!? そ、それにオレ、こんな下着の着方とか、分からないからっ……! だ、だからっ、着させないでっ……! これ以上、オレを女の子にしないでっ……!」
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