オレが美人すぎて死んだり人間やめたり男性器が消えたり世界が変わったりドリンクバーになったり(1/2)

 ……身体が気怠い。

 

 まるで身体が筋肉痛になったような、職場で無理やり女性的に笑い続けた所為で表情筋が筋肉痛になってしまったような、性交目的の客に無理やりに飲みたくもない酒を飲まされたような、そんな感覚が全身を覆っている。


 閉じっぱなしだった瞼を開け、両目に景色を入れてみると、ここが先ほどまでいた廃ビルではない事に気が付く。


 どうした訳か柔らかいベッドなんていう人造物で寝ていたオレは重い身体を両足で立つ事にした。


「……何処だここ……」


 忌々し気にそう呟いて、周囲を見渡しがてら、ツギハギだらけの記憶を整理する事にする。


 オレは確か吸血鬼を自称するような変な女と一緒に地面に落ちて――。


「――夢、だな」


 うん、夢だ。

 そうだ、そうに違いない。

 

 そもそも、この世に吸血鬼がいるかという話だ。


 屋上の4階から事故って落ちてアスファルトの地面にぶつかって生きている存在が現実世界にいて堪るか。


 仮におかしいのが生物ではなく物理法則の方だったとしても、それだとオレが永遠に投身自殺できねぇから凄く困るのだが、手慰めがてらスマホを弄って情報収集しようとして、それが無い事に今更気がつく。


 確か夢の中の俺は自殺をする前に変なテンションになってしまって、ついついスマホを屋上から投げ捨てていた筈。


 屋上の4階から機械の不法投棄でもしようものならば、人体よろしく機体もバラバラになるであろう事は想像に難くない、のだが。





【これでアンタは私と同じ不老不死の女吸血鬼。私だけの、眷属です。これから、ずっと、よろしくお願いしますね――?】




 そんな言の葉を述べた唇と、オレは確かに交わった。


 頭の中が疑問符の嵐でいっぱいになるのを自覚しながら『私と同じ女吸血鬼』とという単語に思わず、嫌な予感を覚えてしまい、現状の自分を改めて確認しようと己が状況を肉眼で確認してみる、と。


「なんか知らん胸が生えてる⁉ というか、何でオレは全裸なんだ⁉」


 なんだこの胸⁉ 

 というか3歳の時からあった筈の醜く酷い火傷の跡が無い!?


「……っ……!」


 視線の先にあるのは、女性の胸。


 そして、オレと苦楽を共にした男性を象徴する器は何故か無い。


 このままずっとこうしているとしてはいけないような事をしでかしてしまいそうだから、オレは視線を逸らし、現実逃避のように廊下に繋がっているのであろう扉を開け――。





「あ、良かった。ようやく起きたんですね。おはようござ――あっやば、また童貞血液ゲロ出るごぼっ、ごぼぼ、おろろろろろろ……! ……こひゅっ、ひゅぅ、ふぅ、ふーっ……ふふっ、そう言えば私の高尚が過ぎる名前を伝えていませんでしたね、童貞人間。私の名前は水無月みなづきかさご――ごぼっ……!? 見ての通りの美少女吸血鬼おえっ、おえぇぇぇぇ……!?」

 

「…………」


「あ、あの……寝起きのアンタに悪いんですけど……その、血を……血をくださ、ごぼぼぼぼぼぼっ……!? ほ、ほら、可哀想でしょう? 可哀想ですよね? 可哀想だと思ってごぼぼぼぼ⁉ ふ、ふふふ……同情するなら処女の血ください、処女のおろろろろろおろろろおろろろろろろろろろろろろぉぉぉ……! ま、待って!? 無言で扉を閉めないで⁉ 助けて⁉ お願いですから助けて⁉ お願――ごぼっ、けほっけほっ、ごぼごぼごぼぉぅっ⁉」




━╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋━




「んっ、んんっ……ぷはっ……えへへ……おいひぃ……!」


「まさか本当に廊下で延々と泣き続けて、人の胸に嚙みついて血を吸わせてくださいとお願いするとは思わなかったぞテメェ」


「うっさいですよ童貞人間」


「そんな名前で呼ぶんじゃねぇ」


「じゃあ何て言えばいいんですか」


「……夜宮、夜宮よるみや璃汐りせ

 

「ふーん。夜宮、ですか。処女になったアンタの血、すっごく美味しいですよ。水無月かさご様ポイントを100点くれてやりましょう」


「そんなもんいらねぇ――ぁ、んっ……!?」


「……ふーん? 本当に女の子みたいな声を出しちゃって、まぁ可愛い。それから随分と情けない顔してるじゃないですか、夜宮。このまま無抵抗で母乳出してくださいね?」


「母乳、じゃなくて……! ただの血液……だろう、がっ……!」


「処女の胸から出る血液なら、それはもはや母乳です。さーて、せっかくですからお代わりでもしちゃいますかね? 吸って良いって言ってくれましたからね? 双方合意ですもんね?」


「まっ……! や、やめっ……んっ……!」


「どうです? 、夜宮?」


 ニマニマと笑いながら、そう言ってくる彼女の紅い瞳には……女の子の胸が出来てしまっている全裸のオレが映っていた。


「あらあら、男だ男だオレだオレだとか言っている癖に情けない顔しちゃってますねぇ……? 鏡とか見ます? もうすっかり女の子の顔してますよ?」


「……や、やめろ……」


「聞いてあげませーん」


「……っ……」


「見ました? 見ましたね? どうです? アンタの中身も本当に女の子みたいになっちゃいましたね? こんな顔で男の子なんてとても言えませんね?」


「ち、ちがっ、こんなのっ、オレ、じゃなっ――んっ……!? もう、止めっ……! これ以上、オレの胸、吸うの、やめろっ……!」


 止めろと主張するオレの男じゃない胸を包む手に力を入れて、逃げようとする吸血対象を逃がさないと言いたげに彼女はオレを引き寄せる。


「意外とアンタ、女の子の才能ありますね?」


「女の子の、才能なんて、ない、からっ……!」


「今まで1000人以上の処女で遊んできた私が言うのも何ですけど――アンタ、今までで見てきた処女で1番可愛い処女ですね? 血の味も今までで1番最高です。そしてアンタの方も……ふふっ、私との相性は抜群みたいですね?」


「そんな訳……ぁ、んっ……!」


 防音設備が整った正方形の部屋で、2人だけの共同生活スペースで、1つのベッドの上で2人の身体が絡み合い、悲鳴のようにベッドが軋む音と、本当の悲鳴が部屋の中に満ち溢れる。


 その気になれば抵抗出来る筈なのに、胸部から吸血させる事をたったの1回許可させてしまったが為にオレは取り返しのつかないミスを体感させられていた。


 この吸血鬼に身体を許してからというものの、身体が異様に熱い。

 本当に熱くて、抵抗という単語を脳裏に思い浮かべるだけで、抵抗を実行する事が出来なくさせられている。


「ようやく自分の身体がおかしくなっている事に気がつきました? 吸血鬼はこういう事する際に吸血対象に血液の巡りを良くして効率よく吸血をする為に媚薬に酷似した成分を吸血対象に注ぐんです。せっかくの食事を邪魔されたら興醒めでしょう? だから抵抗させない為にこうする……もちろん、効きが悪い人間もいるにはいるでしょう。じゃあどうするか? 分かります?」


「し、知ってる訳、ないからっ……」


「じゃあ今から身体で覚えましょうね、夜宮」


 いたずらでもするかのような笑みを浮かべながら、ヤツはオレの胸の肌を甘噛みし、ぶすりと、太い牙が、自分の皮膚の下に流れる血管に到達している牙から、入ってはいけない何かを注ぎ入れてくる。


「――っ⁉」


「ぷはっ……正解は更にたくさん媚薬成分を注入する、でした。不正解の夜宮には体罰がてら更に入れてあげましょう」


「――んっ……!? や、やめっ……! これ以上、オレをおかしく、するの、やめっ……!」


「気持ちいいですか?」


「気持ちよく、ないっ……!」

 

「それは残念。じゃあもっと注がないとですね?」


「えっ――ひゃぁっ……!? だ、め……! あたま、おかしく、なるから……! もう、やめてっ……!」


「気持ちいいですか?」


「きもちいい、からっ……! きもちいい……! ほんとう、きもちいいからっ……! これいじょう、きもちよく、しないでっ……!?」


「そうですか。じゃあ、もっと気持ち良くしてあげますね? 私ったら本当やさしー」


「……やだ。やだやだやだやだ……! ――っ、んっ……!? ぁ、ぅっ……ひゃん……!? もう、きもちいいの、やだぁ……! きもちよくなるの、もう、やだぁ……!」


「……ふふ。中身は男のくせに本当に可愛い……」 


 思考が纏まらない。

 何かを考えようとしても、全身に流れる血液が余りにも熱すぎて頭が茹るようなそんな感覚がまとわりついて、結局のところ何も出来ない。


 男の身体から女の身体にさせられて、男の身体には無かった箇所から絶対に知り様がなかった疼きと熱が蠢いていく。


 彼女の舌先が、乳首の周りをそっと撫でるように這う。優しいその動きに、思わず身体がぞくりと震えて、出したくもない声を、女の子として出してしまう。


 漏らしたくないそんな声を出さないように両手で口を覆い隠すけれども、それでも女の子の声は消えてくれなくて。


「元の身体じゃ絶対に味わえなかった経験が出来て良かったですね、夜宮?」


「……もっ……むりっ……!」


「あら、もう我慢できませんか? そうですよね、苦しいですよね、怖いですよね。この知らない気持ち良さをさっさと外に出して安心したいですよね? 私に胸を吸われていっぱい出して早く気持ち良くなりたいですよね?」


「……は……っ……は、やくっ、はやくっ……!」


「――じゃあ、後10分だけそのまま我慢してみましょっか。アンタは自称男の子、それも15歳のかっこいい男の子ですもんね? それぐらい、かっこよく、我慢できて当然ですよね、夜宮?」


 それから10分という永遠を思わせるような生き地獄を体験し、あっけなく気持ち良くさせられたオレは、ヤツとこういう時の徹底的に上下関係を叩き込まれてしまった。


 恥ずかしさと、情けなさと、気持ち良さが入り混じった顔を見られたくないが為にベッドの布団に顔をうずめても、愉快そうに笑う女吸血鬼の声が耳に届いて、それだけで自分の背筋がゾワゾワと打ち震えてしまって――吸血されたくなって頭がおかしくなってしまったオレは、女の子になった自分の身体を吸血鬼に自分から捧げてしまっていた。


 おかしい。

 こんなのおかしい筈、なのに。


「……い、いやっ……!」


「あら、あらあらあら! 夜宮ったらかわーいーい! じゃあそんな夜宮をもっと可愛い女の子にしてあげますね」


「やっ……やめっ……!」


 甘い声に包まれながら、じんわりと血が吸われていく。

 オレの生命を活動させる為の原液が、遊びで奪われていく。


 まるで甘い蜜を啜るかのように、女の子になってしまったオレの身体から朱色の母乳が外に出てしまう。


 そして、その奪われた血液の代わりにとでも言うように身体に入ってはいけない毒がどんどんと自分の身体に入ってきて、犯し尽くしていく。


「ご馳走様でした。また吸わせてくださいね、私の、私だけの専属血奴隷ドリンクバーさん?」


 ほんのりとオレの血で赤く染まった唇を見せながら、彼女は甘ったるい声でそう口にした。

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