第4話 睡魔に負けたら出ちゃう部屋
「とりあえず突き当りの部屋に入っちゃったけど、もしかして出口ない?」
「しかもまたふかふかのベッドがあるし。またメモが置いてあるし」
「なになに。『先に眠ってしまった方が負けです。敗者を部屋から引きずり出してください』って、なにこれ。キミを寝かし付けてずるずる引きずり出せってこと?」
「サウナに入ってくすぐりあってすっごい疲れたけどさ、さすがに熟睡しててもベッドから落とされたら目を覚まさない?」
「わたしが勝つ前提なのはそりゃそうでしょ。耳元で羊を数えてあげる。あっという間に夢の世界だよ」
ばふばふ(マットレスを叩く音)
「さ、ここに座って。つい横になりたくなるようなささやきをプレゼントしてあげる」
「恥ずかしがらないで。いいんだよ。素直になって」
「ふぅ~~~~~~。ひつじが一匹。ひつじが二匹。ひつじが三匹……どうしたのもじもじして。眠気より先に興奮しちゃった?」
「キミも負けるつもりはないってことかぁ。じゃあ、二人で横になろ?」
「座ったままじゃさすがに眠くならないよ。何時間も経ったら疲れてくるかもしれないけどさ、それはお互いにキツいでしょ」
ばふっ!(マットレスが沈む音)
「ほ~ら。横になって。ふかふかで気持ちいいよ。このベッドで最期を迎えられたら幸せな人生だったなって思えるかも」
「ふふ。さすがにちょっと恥ずかしいかも。さっきお互いくすぐりあったからかな。体の形がイメージできちゃうから」
「くすぐる以上のことをしたら……ルール的にどうなんだろうね。ゲームマスターが焦って止めに来たりして。それとも、わたし達がそういうことするのを待ってたりして」
「ゲームマスターの目的がわからないまま死んじゃうのはモヤモヤするね。わかったら死んでもいいってわけじゃないけどさ、悔いが残って地縛霊になりそう」
「うらめしや~。なんてね」
「どう? 少し眠くなってきた? わたしは全然。さっきぐっすり寝たからね。それはキミも同じか」
「じゃあさ、疲れるようなことしよっか」
「はぁ~~~~~~」
「胸がドキドキし続けたら疲れるでしょ? 全速力で走った後みたいに」
「レロレロレロレロ。レロレロレロレロ」
「よわよわでザコザコな耳を舐められてるみたい? 本当には舐めないよ。でも、先に眠ったら舐めてあげるかも」
「どうする? 負けを認めて眠っちゃう?」
「耳の中に直接わたしの声が注入されたらきっと天にも昇る気分だよ? デスゲームに負けて本当に昇天しちゃうかもしれないけど」
「眠ったまま死ねるなら幸せじゃないかな」
「あれ? 眼が冴えちゃった? ごめんごめん。さすがに死ぬことを考えたらそうなるよね」
「じゃあ、幸せなこと想像しよ」
「さっきはメイドさんだったから……ママにいっぱい甘えていいんだよ?」
「ママが見ててあげるから、ぐっすりねんねしていいんだよ」
とんっ……とんっ……とんっ……(頭を叩く音)
「あなたはだんだん眠くなる。あなたはだんだん眠くなる」
「これはママじゃなくて催眠術か。ママって意外と難しいかも」
「ママは自分から何かするっていうより相手を受け止める方だもんね」
「ねえ、ママにしたいことないの?」
「なんで耳まで真っ赤になるのかぁ? ほんと男子ってエッチなんだから」
「激しく動いたら疲れて眠くなるかもね。わたしの初めてを犠牲にデスゲームに勝つのも悪くはないかな。命と同じくらい大切なものだから」
「ふわぁ……う~~ん。ちょっと眠くなってきたかも。おかしいな。ぐっすり寝てもベッドが気持ち良すぎて……」
「このまま寝落ちしたら何をされても起きなさそう。すっごい熟睡できそうな気分。おかしいね。デスゲームの最中なのに」
「このまま二人で一緒に寝たらさ、また引き分けみたいになるのかな。ずっと引き分けでデスゲームし続けるのも……悪くないかな」
「もう無理……がまんできない。おや……すみぃ」
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