第2話今日の宮廷は忙しいみたいです

 まーちゃんへ


 今朝から宮廷はとても騒がしくて、いろいろな人が準備に大わらわなんだ。

 今日だけは王子も王女も私をぶつ余裕がなくて、王妃や王も私を罵倒する暇がないよ。


 だから、私は自分がいつも寝ている奴隷部屋の隅っこにじっと座って、時間が過ぎるのを待ってる。


 懐かしいね。

 早くお金が欲しいからって、いつもの場所に、数時間前から待機して、おじさんが来るのを二人で待ってたね。


 炭酸ジュース一本と公園の水だけで五時間も二人でじっと待ってたね。

 まーちゃんは、「やだー。日焼けするー」って言ってた。


 前日に買ったUVカット率100%の日傘と女優帽子被りながら、日焼け止め塗りながら言うんだもん。

 そういうの買っちゃうから、お金なくなっちゃったじゃんか。


 でも、しょうがないよね。


 まーちゃんのきめ細かい透き通るような白い肌、くっきりとしたピンク色の唇、キュッと引き締まったウエストと足首。ツヤツヤの金髪ロングヘア。


 その全てがまーちゃんの努力の賜物だもん。


 あの頃はまーちゃんと五時間ずっと喋っていたけれど、今は一人で座ってるだけだよ。

 でも、つまらなくはないんだ。


 こうやって、じっと座って、心を澄ませていると、どんな魔法が、どんな場所で使われているのか感じることができるから。


 たとえば、城の厨房のあたりでは火の魔法が使われているし、洗い場では水や洗浄の魔法が使われてるの。

 王都でも火の魔法や水の魔法は普通に使われていて、朝から晩まで誰かが発動しているんだよ。


 私は魔法を使う才能はなくて、役立たずだけどね。

 すごい魔法でも使えれば、少しはぶたれないかもしれないな。


 そういえば、二週間くらい前から王都の遥か向こうから、ずっと魔法が発動され続けてる。毎日、少しずつこちらに向かってきていて、今は王都のちょっと近くまで来ている感じ。


 どんな魔法かと言うと、視る魔法。

 目に見えないものでも、特に、人の心がずっと視え続けるような感じがする。


 魔法がずっと発動されている魔道具を持って移動しているのかもしれないし、ずっと発動される魔法なのかもしれないし。


 魔法にも色々な種類があって、発動したら、消えるものやずっと発動し続けてるものとか色々。


 午後になったら、視る魔法が王都に入ってきた。その時、視る魔法の近くから新しい魔法が城に発動された。


 この魔法は、城の中を密かに探るような感じ。スパイの人がよく使ったりする魔法。


 視る魔法が城に入ってきた。


 この日、時間になっても同じ部屋で暮らす奴隷の皆は戻ってこなかったし、私の晩ご飯もなかった。


 何があったのか知らないけれど、こういう日は寝るに限るよ。

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