ハーレム系ラブコメ主人公だったはずの僕が暴走族の抗争に巻き込まれたら、ぶっちぎりラブコメが始まった件
ジョニー・ジョヴァンニ
1stレコード『燃えれば青春』
A-SIDE
INTRO
この話は、
上原尚樹は「主人公属性」の持ち主である。
様々な場面において主人公オーラを駆使し、いかにもアニメに出てくるキャラのような女子高生が何人も上原に関わってくる。
いわゆるハーレムが成立する状態だ。
その美女たちのうち誰か一人と付き合えばいいものを、関係が進展するような行動を取ることができずヒロインとの間柄が微妙になり、ストーリーが長引いてしまう。
告白する気配もなく、いつまで経っても優柔不断な上原はのんびりと彼女たちと平和な学生生活を過ごしていく。
――そういう物語だ。
しかし、それは「アイススネイク」という暴走族から追い出された不良の横花生がこのストーリーに登場しなかったらという話だが……
〓〓〓
「俺が?キモい?変態だと?チチチ、家に帰るまでいい子ちゃんぶってるつもりか?学校はもう終わったぞ。下校する時はスカートをもう少したくし上げた方がいいんじゃねぇ?それでもっといい景色が見え――」
「消えて」
「はあ?!ゆうみちゃんどうした?俺が何を――」
「聞こえなかった?消えて」
「新学期始まって早々その態度か?俺たちゃ帰りが同じ方向だから、もう少し優しくしてくれたっていいんじゃねぇ?」
「今私たちは駅に向かってるだけ。それ以外あなたと関連性がない。たまたま私があなたの家の隣に住んでいるみたいな設定だったらまあわかるけど、全然違う。路線が違うからいつものように駅で解散よ?」
「こないだは手を繋いで駅まで歩いたじゃん。マジでときめくひと時だったわー」
「そんな記憶ない。あなたの頭が心配になるぐらい怖い妄想ね。でも、私はあなたの精神科医じゃないの。さっさと消えて」
無惨。
薄情。
理不尽。
それらはこの振られ様に同情できる男の頭に浮かぶ言葉であろう。
男にターゲットにされたのは、二年の秋野ゆうな。
名前すらちゃんと覚えない無礼なヤンキー少年に「ゆうみちゃん」と呼ばれるのは、秋野ゆうなにとってどうでもいいことだ。逆に、その方は都合が良いかなと判断して、訂正する気にもならない。
諦めて歩道に突っ立っている男子高生、ただ歩き続ける少女の背中を見送るだけであった。
これを凌げる男は少ないはずで、高校すら卒業していない10代にはそのショックから新学期が始まるまで二度と女子と関わらないようにする傾向が見られている。新しい学校に入学するまで女子と関わらないケースもある。一生でも二度と女性と…………まあ、極端なケースには触れないでおこう……
とにかく、今そのような状態に陥った男子高生がいる。
彼は立ち尽くしたまま、ポケットから手鏡を取り出し、自分のリーゼントヘアを確認する。
その途端、彼の硬派な表情がやわらぎ、笑顔が浮かぶ。
「よっしゃー!」
さっきから片方だけ入れていたイヤホンのぶら下ってる方を耳に挿して、ボリュームMAXで曲をかける。
「ロックンローラー!COMING OVER!横須賀からUSAまで!」
道端で大声で70年代のロックンロール曲の歌詞を叫ぶ男子。
勉強嫌いで留年を繰り返したのち、ようやく二年生に進学した
しかし、女子高生に振られすぎて、『オメェのダサさが俺らまで感染するんだよ!』という理由で不良の男子高校生や大学生で構成される暴走族から追い出された。
寄る辺のなくなった村山は、今までなら他のメンバーのバイクを借りて下校しているはずだったが、無様に「普通」の高校生と同じように徒歩で下校しないといけない羽目になってしまっている。
おまけに、今しがた再び女子高生に振られ、『はあ?!まだ分かってねぇのか?彼女作るまで俺らはテメェのツラさえ見たくねぇっつーの!』という条件を満たすのに失敗してしまった。あまつさえ、村山は一文無しの
なのに、村山は落ち込んでいるような様子を一切見せなかった。
逆に、まるで何か祝うべきことでもあったかのように、好きなロックを聴きながら、喜んでスキップしたり跳び上がったりする村山は嬉しそうに見える。
ヤンキーの俺は女子の戯言なんかに凹まねぇ――そう決めたからである。
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