第21話 花火大会を飽き性なギャルと


 なんでこうも嫌なイベントほど、すぐに来てしまうものなのだろうか。


 和泉に色々勘違いされた挙句"とある計画"を持ちかけられた俺は、定期テストが終わった翌日に行われる花火大会の日の夜、一人で家を出た。


 和泉は俺が金城を好きだと完全に勘違いしており、否定しても聞く耳を持たないからどうしようもなかったのだが……まさかこんなことになるとは。


 和泉が持ちかけた計画とは、花火大会での告白大作戦。

 花火大会当日、和泉と金城が待ち合わせしていた場所になぜか俺が現れ、和泉は適当な理由で来る前にドタキャンすることにより、偶然を装って二人きりになるという……いかにも恋愛脳が考えそうな浅はかな計画だった。


 本来なら金城は、和泉と花火大会を過ごすのを楽しみにしてるはずだ。だから今日まで金城は、俺といる時に花火大会の話題を出さなかった。


「本当にこれでいいのか?」


 ずっと迷いながらも、和泉に言われた場所へと俺は足を進める。

 場所は高校の近くにある公園の大きな時計の下。


 そこから会場の河川敷まではそれほど遠くなく、道中には夜店がたくさん並んでいる。


 俺はそれらを一瞥しながらも、公園へ向かう。


 すると……。


「……ん? あれ、西山じゃん」


 そこにはいたのは、こんな暗い夜でも分かるくらい、綺麗な純白の生地にスミレが描かれた浴衣を身に纏った金城だった。


 その金髪もいつも以上に可愛らしく結われており、いつもは派手な見た目の金城からは考えられないくらい、落ち着いていて美しい見た目。


 って、おいおい、見惚れてる場合か。


「え、えと! ぐ、偶然だな、き」

「はぁ……やっぱそうか」


 俺が話しかけた途端、何やら納得がいったような顔で大きなため息をつく金城。


「へ? やっぱ?」


 俺は間抜けな声で聞き返す。


「西山さ、どうせ姫奈に言われてここ来たんじゃない?」

「そっ! それは、その」


 なんでもうバレてんだよ⁉︎


「もうなんとなく分かったから。最近、姫奈が浴衣の話すると微妙な返事しまくってたし、その割にSNSには高めのコスメ載せてたからなんとなく嫌な予感してたけど」

「嫌な予感? どういうことだよ」


 金城は呆れ顔になると、不意に俺の鼻頭をそのピンクネイルの人差し指でグリっと擦った。


「西山は姫奈にはめられたってこと。どうせ私と遊べるからって姫奈に言われてここ来たんでしょ? 姫奈は浴衣のための貯金を高めのコスメに使ったから、今日は花火大会来れなくなったんだよ。つまり西山は利用されたってこと」


 金城はそう解釈したみたいだが、前後関係が逆になっている。

 おそらく高いコスメとやらを買ったのは、花火大会で俺をアシストすることが決まったから、浴衣を買わなくて良くなって、浮いた金で買ったんだと思う……多分。


 ここは和泉の名誉のためにも一応、弁解しておくか。


「えっと実は……今日は和泉から、金城に告白しろって言われてて」

「……は? こっ、告白⁉︎ わ、わたしに⁉︎」


 金城は急に取り乱しながら手に持っていたポーチすら落とす。


「おいおい。驚きすぎだろ」


 俺はそれを拾い上げてなぜか手をワチャワチャさせている金城に持たせる。


「西山って、そう、だったんだ」

「は? そう?」

「そんじゃ、早く告白してよ、西山……」

「い、いやいや、しないって」

「はあ⁉︎」


 今度は急にキレる金城。

 今日はやけに感情の切り替わりが激しいな。


「実はこの前、金城と話してた時に和泉に俺が金城のことを好きって勘違いされたんだよ。それでお節介にも花火大会に自分が約束をドタキャンするから俺に告白しろって言い出して……って金城?」

「……はぁぁぁぁ」


 とても賑やかな花火大会にするものとは思えないレベルのクソデカため息が金城から漏れる。


「あーもう飽きた! 西山が夜店の食べ物奢ってくれないなら帰るしっ!」

「それ、飽きたというよりキレてないか?」

「キレてない! とにかく奢れ!」

「あ、ああ。それはいいけど」

「っし! じゃあ飽きないためにここから河川敷までにある全部の夜店で1個ずつ買うってことで」

「は、はあ⁉︎」


「このわたしを騙したんだから、今日は真夜中までわたしに"付き合う"こと。じゃないと飽きて帰るから。分かった?」


「わ、分かったよ……」


 今宵で俺が破産することも分かってしまった瞬間だった。





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