第5話 あいつブスだし 1
悠と陽介は住宅街の小道をすり抜ける。
塀と塀の間、子供が横になってやっと通れるような隙間を二人は好んで近道に使う。
「陽介はさ、平田のこと好きなの?」
悠の突然の発言に、先頭を歩く陽介が立ち止まる。
「いッ!」
ドッと音を立て、陽介のランドセルに悠の顔が当たる。
「はあ!? 何でだよ! 全然違うよ! あんなブス!」
動揺した陽介は何度も悠に振り返ろうとするが、ランドセルがどちらの壁にも当たり、なかなか振り返ることが出来ない。
「だ! おまッ! ほんと違うから! あいつブスだし!」
狭い小道を縦に並ぶ二人、先頭の陽介は正面を向いたまま大きな声で何かに抵抗をしている。
後ろから真っ赤になった陽介の耳が見える悠。おそらく耳だけではなく顔面も真っ赤であろうことは想像に難くなかった。
「わかった、わかったから落ち着いて。ランドセル壊れちゃうよ。」
「だって、お前が、何か変なこと! それで俺ッ、ほんと違うから!」
「わかったって。それ以上赤くなったら血管切れちゃいそうで怖いよ。」
陽介はピタリと動きを止めるとひとつため息をつく。。
悠はその陽介のランドセルを後ろから押す。トボトボと無言で小道を進み、広い通りに出た二人はやっと向かい合うことが出来た。
「ごめん陽介。そんなに何か、あれだと思っていなくて。」
「ああ。いいよ。隠したって悠には何でもバレるんだし。」
「ちょっと無神経だったねごめん。」
「ああ、いいって。はぁ…何かすっげぇ疲れた。」
「…お疲れ様。」
「でもまあスッキリもしたな! よし、後藤商店でアイスでも食おうぜ!」
「あ、じゃあさ、衣笠神社に寄って行こうよ!」
「神社ぁ!? まあいいけど。」
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