第6楽章 帰省

バスの時間を気にしながら

最後の荷物を鞄に詰めこむ

部屋の中には もう何もない

古い外国映画のポスターと

君が作ってくれた オレンジのカーテンだけが

四年間の想い出として 残っている

きっと君は駅まで 

見送りに来ては くれないだろう

昨夜(ゆうべ)心にもないこと言って

傷つけてしまったから

後悔はしていないよ

君に何も残さなかったこと……


住み慣れた この部屋の

灯りを消した時に また始まるのさ

明日からの君のいない

もう春の歌声が聞こえ始めている

僕が生まれて育った あの街での

新しい生活の第一歩が

きっと君はこの都会で

幸せな暮らしを 見つけるだろう

夜汽車が冬の帳(とばり)を

通り抜けてしまうまでは

君のことを思っていよう

笑顔が素敵だった 君のこと……


きっと君は駅まで 

見送りに来ては くれないだろう

昨夜(ゆうべ)心にもないこと言って

傷つけてしまったから

後悔はしていないよ

君に何も残さなかったこと……



【創作メモ】

卒業をテーマにした詩です。学生時代にギターを購入して、ひたすらオリジナルソングを作っていました。もちろん、歌手になろうとか、レコードデビューしようとか、ではなく、ギターの弾き語りができて、オリジナルの歌も唄える!ことが、ステイタスだった時代でした。(モテたいため、だけの歌作り?)

 卒業をテーマにした詩も数多く作っています。100選の中にも数篇載せています。ただ、この詩は、その中で最初に書いた詩でもあります。実体験は書けないので、小説、あるいは、ドラマのワンシーンを詩にするという形式?パターンを採り入れた最初の作品でもあります。

 さて、当時私の作品を聴いてくれたのは、彼女?ではなく、友人(つまり男)でした。カセットテープに吹き込んだオリジナルソングを聴いてもらった時、何故かこの詩を気に入ってくれたことを覚えています。彼の実体験に似たシーンがあったのか?は、永遠の謎ですが……。

 ちなみに、私の姉がこの詩を聴いて、

「オレンジ色のカーテンなんて、趣味が悪い!」と、言いました。

 歌詞は『オレンジのカーテン』なのです……。『オレンジ色』か『オレンジ(みかん)のイラストが描かれた』ものなのか?

作者としては、読者に想像して欲しい、そういうテクニックなのですが……。

 あなたは、どちらを想像しますか……?

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