釜石、米里との交流が途絶え、景色の彩度が上がって来た。もちろん、傘は毎日持って来ているし、見かけはするんだけど、話しかけられることはないし、僕にその気はない。でも2人とも、張り詰めたような感じがする。別の言い方をすれば霧や靄がかかったみたいに視界が悪い。僕だってこれは、欲して得た力ではないし、弱まった方が生きやすいんだろうけど、そうなったら僕は、察しの悪くて、身体が弱い、無能だ。ううん、察しが悪くなって身体が丈夫になるならいいんだ。いや、ならないか。感情を察知できなくなっても、日光に弱いのは変わらないし、思いっきり走れないのも、持久力が終わってるのも、変わらない。あらゆる過敏は強度の波はあっても消えることがない。また、独りぼっちか。構わない。もとより友人は望んでいなかったし。誰かと過ごさないからといって不安定になるほど、未完成じゃないんだ。……でも、な……。


 うるさい。3人で、2人で過ごしてた頃はそんなに気にならなかったのに、いまじゃ爆音みたいだ。元からそうだし、この2ヶ月が異例だったのに、もう、耐え難くなりそう。元の生活に戻るだけなのに。うるさい、うるさい、うるさい、うるさい。怖い。聞きたくない。甘いものも多いと重いって言うのと同じで、ポジティブな感情だって過剰摂取は疲れる。しんどい。無理。お友達とわいきゃい話して楽しいんだろうな。休み時間だってそんなにないのに惜しまず話に行ってさ。わかるよ、楽しいもんな。わかるんだよ。それで、誰も悪くないんだ。もし、悪者を探すなら、こんな聴覚を持って生まれた俺だし。……いっそ、聞こえなくなっちまった方が楽なのかなぁ?

「野分くん」

 女性の声だ。なんで?。、

「…アカリさん……?」

 なんで…?いや、他の人の方がもっとなんでなんだけど、それはそうとなんで?

「……大丈夫?」

「えぇ、まぁ…」

「釜石くんから伝言。『お前さんはそう思い詰めるな』だって」

 釜石ぃぃぃ〜〜〜‼︎視たな?余計な真似を…ほんっっとお前さぁ⁈

「わかった。ありがとう、アカリさん」

「ん」

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