第21話 鬼が出入りする鬼頭家

 業者を入れれば刀傷を隠すのは無理だ。

 小学生であるがくは簡単に騙せたが、妙に勘のいい近所の職人に任せるわけにはいかず、ギッタギタにされた応接間の修復は、約束通り鬼たちが手伝った。

 襲撃の日にはどこからともなく庭に現れた鬼たちだったが、洞窟の封印を解いたことでそちらから出入りしている。

 鬼たちは誰でも角を隠せるらしく、ゴツイ男衆くらいの容姿でやってきた。

 朝早くからやってきた鬼たちは「しっかりと綺麗にしてね」と笑顔の母に圧をかけられていた。


「はいっ、もちろんっす」

「任せてください、姐御」

「オレたち、やれば出来る子なんで」


(姐御って……お母さん、それでいいの?)


 桜は鬼たちの敬愛を受け入れてしまっている母を、スンとした表情で見ていた。


 木材は裏山から調達できたので、応接間修復は隠れて行うことができた。


「綺麗に直ったようですね」


 魁が様子を見に来る頃には、ギッタギタのズッタズタにされた応接間が見違えるように綺麗になっていた。

 意外なことに鬼たちは襖の張替えのような繊細な作業も得意だった。


(腕力と体力があるからか? 筋肉最強か?)


 桜がピカピカになった応接間を眺めていると、魁と共に仕上がり具合をチェックしていた真鬼まきが柱からはりにかけてを眺めながら口を開いた。


「結婚式に間に合ってよかったです」


!)


 桜の心臓がドキンと跳ねて顔が熱くなる。


「ははは。桜さん。結婚式といっても形式的なものですから、そんな堅くならないでください」


 魁が笑いながら明るく言う横で、父がボソッと言う。


「そうだよ~、桜。あまり真面目に考えすぎると、当日、逃げ出したくなっちゃうからねぇ~」


 笑顔の父は、言葉との逆のことをそそのかしているようだ。

 魁の笑顔がひきつっている。


(うわぁ~。なんか……うわぁ~)


 桜は自分が嫁に行く日の父を想像して、少し頭が痛くなった。

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