第2話



第六章:未知との遭遇


15体のガンモンスターを排除し、内部は半ば制圧された。


時刻は12:05。予定よりも早いペースで進んでいた。ポリープ型(LV.1)が大半で、時折現れるガス爆裂腫(LV.2)も、爆発前にレーザーで制圧できていた。


「このまま行けば、5時間丁度で終了だな」佐久間がそう呟いた瞬間——カメラが捉えた。


腸壁の奥から、異質な何かが、金属的な音を立てながら滑るように這い出してくる。


「……おい、なんだあれ……」


佐久間の声に、20年の経験が込められた戦慄があった。それは、彼が今まで見たことのない、全く新しい種類の敵だった。


映像解析不能。形状:多脚・金属質・分裂型。

名称:????(未登録)


「データベースにない……」佐久間の声が震えた。


「レーザー照射!」リオが咄嗟に剣を振るった。


ビィィィイ――……


……効かない。


金属的な外殻が、レーザーの熱を完全に弾いている。


「反応なし!? カメラ、後退!」


だが、すでに遅かった。巨大な鋏のような突起が、音速でカメラに向かって伸びてくる。


「リオ!」


佐久間の叫び声が、腸内に響いた。


映像はブラックアウト。


佐久間ミノル、リオ・アサクラ両名、14:02 帰還せず。


---


第七章:分析会議 ―見えざる敵の正体


その日の夜、ガンバスター本部で緊急解析会議が開かれた。


最後の映像データを元に、AI解析システムが敵の正体を推定した。


分析結果(正式名称:スレッドコロニー)


・金属様外殻を有し、レーザー熱伝導を遮断

・活性核が多重構造、切断すると自己再生

・腸内モンスターに類似なし


【発達経路:推定】


2028年、中東某国の化学工場爆発事故により、工業用ナノマテリアルが大気中に拡散。これが人体に侵入し、既存のがん細胞と融合することで変異を開始した。


初期は中東・アフリカ地域でのみ確認されていたが、国際便の増加と共に世界各地に拡散。特に外交官や国際ビジネスマンなど、頻繁に海外渡航する者の体内で進化を続けている。


【国内状況】


現在、日本国内では推定500体が潜伏中すると噂されている。年間3~1件の発症報告があるが、討伐成功率は0%。

あまりにもデータが少ない。


【年間殉職者数の現実】


勇者・カメラマンの年間殉職者数:147名


主な死因:

・レベル3以上との戦闘死(60%)

・その他低レベルモンスターによる戦闘死(29%)

・腸内迷子による酸欠死(10%)

・帰還時の拡大失敗による事故死(1%)


佐久間とリオは、今年度78人目と79人目の殉職者となった。


「世界を飛び回る者には、世界の敵が宿る」


司令官の重い言葉が、会議室を支配した。これは治療を超えた、感染型ガンとの戦争だった。


---


第八章:第二討伐部隊、出撃への想い


本部は即座に対策部隊・第二弾を編成した。


メイ・イシカワ(28)- カメラマン


3D全方位スキャン+AI検出ナビ装備。佐久間の教え子として、3年間彼の背中を追ってきた。


震える手でカメラの調整をしながら、メイは師の最期を思った。


「佐久間さん……あなたが私たちに教えてくれたことを、絶対に無駄にしない」


涙を拭い、彼女は3D全方位スキャンの精度を最大まで上げた。二度と、仲間を見失わせはしない。


クロード・ヤマモト(30)- 勇者


プラズマブレード二刀流、対金属処理専門。冷静沈着な性格で、これまで50体以上のレベル3のモンスターを討伐してきた。


「金属外殻か……面白い」


クロードの表情には、悲しみよりも闘志が宿っていた。プラズマブレードの刃を点検しながら、彼は冷静に分析していた。


「リオの技術は確かだった。それでも敵わなかったということは、従来の攻撃パターンが通用しない。ならば、俺が新しい道を切り開く」


ナナ・ミカサ(25)- 魔法使い


抗がん呪文「カトルセリム」使用者、精神干渉型攻撃対応。彼女の「魔法」は実際には遺伝子操作による細胞制御技術だが、集中のためにあえて呪文形式を採用している。


「カトルセリム……頼む、今度こそ効いてくれ」


自分の力不足で死んでいった患者たちの顔が、彼女の脳裏をよぎる。今回は絶対に、全員を救って帰る。


だが、その心の奥底では、別の想いが芽生えていた。医療業界の不条理、限界、そして——「上層部」への疑問が。


神父マルコ(44)- 僧侶


ナノ抗体による再生制御に長ける回復役。バリアもできる後方支援のプロ、この職業に就いて18年、数え切れないほどの同僚の命を救ってきた。


「主よ、どうか彼らに安らぎを……」


佐久間とリオのために静かに祈りを捧げた後、彼は覚悟を決めていた。


「私には戦う力はない。だが、皆を守ることはできる」


しかし、長年の医療現場で彼が目にしてきたのは、治療の限界と、システムの腐敗だった。救えなかった無数の命、利権に塗れた上層部、そして——真の治療を阻む「何か」への憤り。


ナナとマルコ、バリア系を2人も布陣に入れて念には念を入れたつもりだった。


---


第九章:大臣の苦悩


白鷺美琴・外務大臣の心情


夜の執務室で、美琴は一人窓の外を眺めていた。都心の夜景が美しく輝いているが、彼女の心は深い闇に覆われていた。


「私のせいで……二人の勇敢な男性が……」


国際会議で世界を飛び回る自分の体に、いつの間にか恐ろしい敵が宿っていた。佐久間には故郷に家族がいた。リオには、亡き父への想いがあった。


「私は国のために働いてきた。だが、その代償として、私の身体が他者の命を奪う武器になるとは……」


彼女の頬を、一筋の涙が伝った。


「佐久間さん、リオくん……あなたたちの家族になんと謝ればいいのか」


だが、涙を拭った後、彼女の目には再び強い意志が宿った。


「私は逃げない。この身体の中で戦う第二部隊を、最後まで見守る。そして必ず、この化け物を倒して、彼らの死を無駄にしない」


机の上には、明日の国連安保理の資料が積まれていた。世界の平和のために働く自分が、世界の敵を体内に宿している皮肉。


「せめて、この戦いに勝ったら……もう海外には行かない。日本だけで、残りの政治生命を全うしよう」


しかし、彼女は知らなかった。隣室で夜遅くまで国際電話をしている夫、白鷺雅人の正体を。防衛産業コンサルタントという肩書きの裏に隠された、もう一つの顔を。


---


第十章:再侵入作戦開始


翌朝、午前10時。


「スケーリング開始」


シュゥゥゥ……


光に包まれた四人は、体長5mmへと縮小され、再び外務大臣の肛門から侵入していった。


大腸内部:侵入時刻 10:00


今度は違った。4つの光源が闇を照らし、プラズマの青い輝きが腸壁を彩る。


「3Dスキャン開始。前方150m圏内、生体反応……」メイの声が途切れた。「待って、何か大きなものが……」


スキャン映像に映ったのは、佐久間とリオの遺体だった。腸壁に張り付けられるように、無残な姿で。


「……くそ」クロードが歯を食いしばった。


「安らかに眠ってください……」マルコが十字を切る。


「前進する。ナナ、バリア頼む」


「カトルセリム・プロテクション!」


ナナが遺伝子制御技術を発動させると、虹色の光が四人を包んだ。細胞レベルでの防護膜が、腸内の有害物質から彼らを守る。


そして、遠くから金属的な音が響いてくる。


あの化け物が、新たな侵入者を感知したのだ。


「来るぞ……」


四人は、佐久間とリオが力尽きた地点へ向かって進んでいく。


そこで待つのは、人類が初めて遭遇する、真の敵。


運命の戦いが、今始まろうとしていた。


---


第十一章:金属の悪魔


腸壁の向こうから、ガシャガシャと金属音が響いてくる。


「距離50m、接近中」メイのスキャンが敵を捉えた。「大きさは……従来の3倍以上」


現れたスレッドコロニーは、佐久間とリオの血を吸って成長していた。銀色に輝く外殻は、

まるで戦闘用ロボットのよう。多脚は鋭利な刃物と化し、中央部には不気味に光る核が複数見える。


「あれが……二人を殺した化け物」


クロードが二本のプラズマブレードを構える。青白い光が、決意を表すように激しく明滅した。


「みんな、陣形を組んで!」ナナが叫ぶ。「カトルセリム・フォーメーション!」


四人は素早く戦闘陣形を取った。メイが後方でスキャン支援、マルコが中央でバリア維持、ナナとクロードが前衛で攻撃担当。


敵は一瞬静止した後、恐ろしい速さで四人に向かって突進してきた。


「回避!」

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