イリュラカイコモドキ

■ 1. 学名・和名・分類


学名:Serisoma imitatio @ Ilyura Prime

和名:イリュラカイコモドキ

分類:イリュラ・プライム圏 動物界 節足動物門 絹翅綱 擬蛾目(Pseudolepidoptera)


■ 2. 生息地


惑星イリュラ・プライムの中緯度温帯域「ファレンティス丘陵地帯」に集中分布。標高200〜800mの乾湿入り混じる斜面林に好んで棲み、特に「ネオクワ樹」の樹皮内層を餌場兼巣材に利用する。人工栽培地にも進出しており、現地の養絹農家の周囲でよく見られる。


■ 3. 成体の体長


成体は翅を含め約11〜13cm、翅を除くと6〜7cm。胴部は白くふわりとした鱗毛に覆われ、地球のカイコガ成虫とほぼ同形に見えるが、実際には触角が三分岐構造を持ち、末端には微細な電場感知器官がある。幼虫期も長く、太短い体形と黄白色の体色は、地球の蚕と見間違えるほど。


■ 4. 生態


【餌】

幼虫はネオクワ樹の樹皮繊維を摂取し、同時にそこから抽出した「フィブロキシン」というタンパク質を体内で合成。成虫はほとんど餌を取らず、わずかに樹液を吸うのみ。


【行動】

日中は樹皮下でじっとしているが、樹皮の剥離や人工的な繊維収穫時には一斉に姿を現す。幼虫は外敵に遭遇すると体をくねらせ、鱗毛を放出して相手の呼吸孔を塞ぐ防御を行う。


【繁殖】

雌雄異体で、交尾は夜間に行われる。雌は1回の産卵で200〜300個の卵を樹皮裏に貼り付け、孵化後は約60日間幼虫期を過ごす。その後、地球の蚕に酷似した楕円形の繭を作るが、繭は半透明の淡青色を帯びる。


【絶滅危惧度】

野生個体群は減少傾向にあるが、人工繁殖が盛んなため全体数は安定。しかし、人工繁殖環境では遺伝的多様性の低下が懸念されている。


【現地民との関わり】

現地では繭から得られる「イリュラ絹」が高級素材として珍重され、保温性と通気性に優れることから儀礼衣装や宇宙船内の断熱布地として利用される。また、地球の蚕に酷似しているため、異星交易市場で「懐古趣味の愛玩種」としても人気が高い。


■ 5. 発見時の状況


初めてこの虫を見たのは、ファレンティス丘陵の小さな農村でした。養絹農家が「今年は繭が青くなった」と嘆いていたのですが、近づいてみると繭の内部で動く影。繭を慎重に開けてみると、そこにいたのは、地球の蚕そっくりの幼虫。しかし、触角の構造や繭糸の化学成分を調べると、遺伝的にはカイコガとは全く無関係。つまり、何世代にもわたる人為的な選抜交配による収斂進化だったわけです。ちなみに、その場で数匹が私の肩に乗り、服に繭糸を吐き始めたため、帰り道は半分ミイラ状態で村を後にしました。

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