■ 1. 学名・和名・分類

学名：Monochromorpha variata @ Kepler-442b

和名：モノクロムシ

分類：ケプラー442b圏動物界節足動物門昆虫綱偽甲虫目（Pseudocoleoptera）

■ 2. 生息地

ケプラー442bの亜熱帯高原地帯「マルカノ草原」に広く分布。草丈の高い黒白の縞状植物群落内で最も多く見られる。昼間は強い日射を避け、半日陰となる岩陰や植物の根元に潜むが、曇天時や朝夕には群れで活動する。風の強い日には群れ全体が草原を渡るように移動し、その様子は地平線を横切る白黒の雲のように見える。

■ 3. 成体の体長

単体の体長は約4.5〜6.2cm。体表は完全な白と黒の2色のみで構成され、模様は個体ごとに異なるが、左右対称にはならない。翅鞘はやや透明感があり、下層の筋繊維が淡く透ける。頭部の複眼は黒地に白い斑が散らばっており、天敵からは眼の位置が判別しづらい。

■ 4. 生態

【餌】

主に草原の小型多足類や微小節足動物を捕食するが、花粉や胞子も摂取する雑食性。触角には微弱な静電感知器官があり、草葉に付着した胞子の電荷を感じ取って位置を特定できる。

【行動】

群れを形成し、数十〜数百匹単位で行動する。外敵（特に鳥類型捕食者）が接近すると、個体同士が密着して白黒模様を組み合わせ、巨大な不定形生物に見える「集合擬態」を行う。この擬態は、視覚捕食者の距離感覚を乱す効果があり、特にケプラー442b固有の猛禽類型節足動物「ソラスカイト」には有効。

【繁殖】

雌雄異体で、雨季初期に交尾。メスは地表の乾いた亀裂に、ゼラチン質の保護膜で包んだ卵を20〜40個産卵する。孵化後の幼生は黒一色で、成長とともに白い領域が出現し、模様が形成される。

【絶滅危惧度】

現在のところ個体数は安定しているが、草原の開発や外来捕食者の流入により局所的な減少が確認されている。特に孤立した群落では集合擬態が成立しにくく、捕食圧が高まる。

【現地民との関わり】

現地の入植者「フサロの民」は、モノクロムシを幸運の象徴とする。白黒の模様を刻んだ装飾品や布地は婚礼儀式に用いられ、模様の複雑さは「夫婦生活の豊かさ」を暗示するとされる。ただし捕獲は婚礼直前に限られ、日常的な採集は禁止されている。

■ 5. 発見時の状況

私が初めてモノクロムシを観察したのは、マルカノ草原の薄曇りの日でした。遠くから巨大な白黒の塊が揺れ動いているのを見て、「あれは新種の大型獣だ！」と興奮して近づいたのです。ところが距離を詰めると、塊はサッとほどけ、数百匹の小虫が一斉に散っていきました。私はあまりのギャップに呆然とし、思わずその場で尻餅をつきました。後日、フサロの民の長老にその話をすると、「あれは草原の笑い話だ、お前も仲間入りだな」と笑われ、祝いの酒まで振る舞われたのは、今となっては研究者冥利に尽きる思い出です。