ヨツバラバッタモドキ
■ 1. 学名・和名・分類
学名:Quadrisaltator coniunctus @ Thermanos
和名:ヨツバラバッタモドキ
分類:テルマノス圏 動物界 節足動物門 昆虫綱 バッタ目(Orthoptera)
■ 2. 生息地
テルマノスの温暖性高原地帯「ロドム平原」に広く分布。草丈1〜2mの銀葉草原に生息し、昼間は強い日差しを避け、四体が結合した状態で一本の大型バッタのように行動する。夜間は活動的になり、地表と低木間を跳躍しながら餌を探す。風の強い日には草葉の影に潜み、結合体形態で擬態する。
■ 3. 成体の体長
結合状態では全長約45〜52cm(頭から後脚末端まで)。単体の個体はそれぞれ12〜14cm程度。結合時は腹部と胸部の特殊な鉤状関節で密着し、体色も同調して一枚の翅模様に変化する。離脱時には瞬間的に色調がずれ、外敵の目を惑わせる。
■ 4. 生態
【餌】
主に高原性の小型軟体節足動物や草葉の樹液を摂取。結合状態では前部の二体が探索・摂食、後部の二体が警戒役となる。複眼は四体で視界を共有し、全周に近い監視が可能。
【行動】
平常時は四体が連結して「一個体」のように行動し、天敵である鳥型捕食者からの発見率を下げる。外敵に遭遇すると、バネ仕掛けのように結合関節を解放し、四方八方へ弾け飛ぶ。この分離ジャンプは平均で3.5m、最大で5mに達し、捕食者は狙いを定めづらくなる。分離後は数分以内に再び集合し、フェロモン信号で位置を特定し直す。
【繁殖】
雌雄異体で、繁殖期のみ各個体が独立して行動。交尾後、雌は1〜2週間で土中に卵鞘を産み、孵化幼体はまず同腹兄弟と結合練習を行う。完全な結合行動が可能になるのは羽化からおよそ20日後。
【絶滅危惧度】
現状は安定しているが、高原の開発と外来種導入による捕食圧上昇が懸念される。特に外来の飛翔性トカゲが結合体ごと捕食する例が報告されている。
【現地民との関わり】
入植民は長らく「単一種の大型草原バッタ」と信じていたため、結合解除時の映像は初見者に強い衝撃を与える。現地の牧畜民は、この分離跳躍を「天空の花火」と呼び、季節の祭りで再現した舞踊を奉納する習慣がある。
■ 5. 発見時の状況
私がヨツバラバッタモドキの真の姿を初めて目撃したのは、ロドム平原で風食地形の観察中のことだった。当時、私は「この大きなバッタは意外と鈍い」と油断し、捕獲網を構えて近づいた。ところが次の瞬間、目の前のバッタが「バラバラ」と四方に飛び散ったのである。あまりの衝撃に網を放り出し、つい風向き計を握りしめていた。
この種は人類の入植後20年近く単体生物として記録され続け、複数個体による擬態行動であることが判明したのは、地元牧童の少年が「捕まえたら四匹になった」と無邪気に報告してきた時だったと聞く。科学的発見は、時に好奇心旺盛な子どもの手の中から現れるものなのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます