■ 1. 学名・和名・分類

学名：Photopterus draconalis @ Nereidia γ

和名：ヒカリオニヤンマ

分類：ネレイディア第γ衛星圏動物界節足動物門昆虫綱偽蜻蛉目（Pseudoneuroptera）

■ 2. 生息地

ネレイディアγの水性大気帯に浮かぶ「浮島熱林（Levifolia Canopy）」に分布。地表から300〜800mの高さにある浮遊植物群落に定着し、空中湿度と気流の安定した夜間に最も活発に活動する。主に薄暮から夜半にかけて飛翔し、発光によって配偶者や獲物、さらには他種との縄張りを区別する。

■ 3. 成体の体長

全長約18〜22cm。細長い体軸に対して、翅は4枚とも均等で、最大翼幅は30cmを超える。体表は滑らかな金属光沢を帯びた深緑〜青紫で構成され、胸部と尾部には「発光節」があり、周期的に発光を行う。飛行中の姿は遠目にはまさに大型のホタルのようだが、接近するとその姿はトンボに酷似しており、見る者に二重の驚きを与える。

■ 4. 生態

【餌】

小型の浮遊性節足動物や空中藻類「ルクシム胞子」などを捕食。両目の間にある「光波分光器官」により、獲物が発する微弱な生体発光を識別し、正確に位置を把握する。獲物に接近すると、腹部の発光節を一瞬だけ強く光らせて視覚を撹乱し、高速で捕捉する。

【行動】

飛行能力は非常に高く、上下左右の軌道変更を一瞬でこなす「三軸飛行制御」を持つ。群れで飛ぶことはほとんどなく、個体行動が基本。発光は意志によって制御可能で、「点滅周期」や「色調パターン」で個体識別や感情表現を行う。驚異的な空中静止能力により、まるで宙に浮かぶ宝石のように見えることも。

【繁殖】

雌雄異体。繁殖期には雄が複雑な発光パターンと飛行ダンスを組み合わせた「光求愛」を行う。雌がこれを受け入れると、両者は発光周期を同期させ、ペアリングを完了。受精後、雌は浮遊植物の苞葉の内部に卵を産みつける。幼生はしばらくの間、発光せずに透明な体で静かに育ち、3度の脱皮を経て発光能力を得る。

【絶滅危惧度】

現在のところ個体数は安定しているが、浮島熱林の密度減少が進行中であり、長期的な生息域の喪失が懸念されている。また発光パターンを模倣する人工機器との干渉も問題視されつつある。

【現地民との関わり】

ネレイディアγの民間信仰では、「ヒカリオニヤンマが頭上を飛ぶと天啓が下る」とされ、重要な儀式の夜には発光個体を誘引するための“空灯舞”という行事が行われる。発光鱗片は一部の呪術具や占星盤に利用されるが、採取は羽化後の自然脱落片に限るという厳格な規制がある。

■ 5. 発見時の状況

初観察時、私はその光にすっかり騙されました。霧が立ちこめる浮島の宵闇、点々と漂う金緑の輝き──ホタルだ、と思い込んで双眼鏡を構えたその瞬間、視界の端をなめらかに滑る「巨大な何か」。それは、まるで光の化身を纏ったトンボであり、しかもこちらの観察をまるで「理解しているかのように」一度だけ点滅してから、風に乗って消えていきました。のちに発光周期を解析したところ、その点滅は「警告信号」に近い意味を持つことが判明し、私は密かに謝罪の意を込めて、以後の観察時には決して光を当てないことを誓ったのです。