第44話 返事を買いに


銀行アプリから通知がきた。

なんだと思って開いてみると、こないだのクレジットカード利用額が引き落とされましたうんぬんと言っている。


3万8000円が口座から引かれ、残りは16万。

次の給料日が来たら、いよいよだ。


この金みんな握りしめて銀座の宝石店へ行こう。


君がくれたプロポーズの返事を買いに。


地位も権力もお金もない、地味なアルバイターの俺だけど、せめてこれだけは確かな形にしたいんだ。

だから待っていてくれと頼んだら、君は不思議そうに首を傾けて、それから耳を赤くして「うん」ってうなずいてくれた。


それだけで俺はなんだってできる気がしたよ。


君がくれたプロポーズの答えは、まだ、口の中にある。

でも、もうすぐ伝えに行くから。


きらりきらめく想いを宝石に、この永遠の誓いを輪っかにして、君の薬指にはめよう。

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