価値ってのは内容で決まる22
烏山が呆然とした状態から復帰した瞬間。
もう既に黒ヤギが距離を詰めていた。
「判断が遅い!」
黒ヤギが超至近距離の格闘戦を持ち込む。
ただそれだけで範囲能力を即座に使うしか取り柄のない烏山は何もできなくなる。
「距離をとるすべくらい学べ!」
黒ヤギはそう言って烏山の腹に思いっきり蹴りを入れる。
「っがぁ!」
今まで一方的な範囲能力によって圧倒してきた烏山にとっては近接戦闘というのは未経験のものだった。
それもそのはず、発動速度が速いため詰められることなんて考えたことなかった。
ラグが生じやすい黒野とは違い、烏山も金ミツも和也も自分の適正距離以下に対する判断も攻撃も弱い傾向にあった。
それは三人がこの学校での強者であったから。
だが、その力を十全に発揮できない今は
「ひでぇ」
「あんなに一方的になるのかよ」
「でも、アイツのせいで負けたまであるんじゃね」
観客から見れば烏山は真の戦犯である。
だが、黒ヤギから言わせれば
(こいつを活かし切る動きを模索しなかったチームの敗北だな)
いずれ起きるただの壁にしか思っていなかった。
烏山は
(俺のせいで…なら、せめて…せめて…)
烏山は歯を食いしばる。
殴られた続けて集中しきれない今の状況を無理やりにでも集中する。
「だい…規模…魔法…メテオフォール」
その瞬間、巨大な岩が落ちてくる。
それは戦闘フィールド全てを覆い尽くすほどの巨大なもの。
黒ヤギはなるほどと頷く。
「せめて相打ちにか」
その意図に微笑む。
「この状況でよくやったよ。これだけ大規模なもの相当の集中力が必要だったはずだ」
烏山を褒め称える。
烏山はこの魔法を使うのに魔力を消費し切っており意識が朦朧としている。
だが、意識だけはある。
(防げるってのかよ…これを?ありえないだろ)
その余裕な態度に察してしまう。
黒い何かが黒ヤギの身に纏う。
それは魔力だった。
「俺の力は『アンチマジック』と『アンチマテリアル』言ってしまえば対魔法と対物ってやつだ」
黒い魔力を身にまといその形を変える。
そして、それを聞いた。
それは咆哮だった。
それは雄叫びだった。
それは絶望を象徴した。
黒い魔力の息吹がメテオフォールを粉々に破壊していた。
(あぁ、そうか本当はこいつはこれをしたかったんだ)
楽しそうにしている黒ヤギを見てそう思う烏山。
(そりゃぁ戦ってる時何度もガッカリするわけだ)
これを使う必要すらなかった不甲斐ない自分たちを知り、迫り来る黒ヤギの拳を烏山は清々しい気分で受け入れるのだった。
「勝者!四宮 八木!」
試合が終える。
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