価値ってのは内容で決まる

「いやぁ、かれこれ何年ぶりの学校だ?なぁ銀ヤギ」

「なんだよその呼び方」

「良いじゃん、同じ名前だからややこしいだろ?」


羽可慈愛高校の校門前で二人の四宮 矢木が立っていた。

時間としては午前であるものの明らかに授業中である。


「それでお前を案内した後の約束は破るなよ」

「イエスマム!」

「だから色々とちげぇ!!」


そうして騒がしくも二人は学校に入って行き、そして…



(どうしてこうなった)


銀ヤギは後悔していた。


「あんたらとしても悪くないだろ?コウチョーセンセ」


黒ヤギは目を怪しく光らせながら校長に交渉を持ちかけていた。

そして、当の校長は凄まじい威圧を持って黒ヤギを睨んでいる。


「ふむ、そもそも君が平行世界の人間という証拠はないのでないかい?」

「確かにそれを証明するものはないのが困ったちゃんだぜ」

「それにさっきから君は私を舐めているようにしか見えない。そんな相手に耳を貸す余地があるとでも?」


校長の威圧が強まる。

銀ヤギはそれに対して鳥肌どころか息すらできるか怪しい状態となり、そして…


「あんたらにとって強さは発言力。それで合ってるか?」


黒ヤギは平然としていた。

むしろ銀ヤギを見て


『何してんだおまえこの程度で』


と罵るように見ていた。


その言葉に対して校長は頷いている。


それを見た黒ヤギは嗤う。


「んじゃ、この程度の威圧程度の校長じゃ俺を従わせることは無理だな」


それは威圧とは呼べなかった。


ただ、人を殺すような圧が周囲を支配し、銀ヤギは息を吐くことも吸うことも許されずにその場で倒れる。


(…なんだこれ…意識は辛うじてあるけど…)


それを放つ本人、校長は険しい顔をして黒ヤギを見ている。


「なぜ君は耐えているんだい?」


そんな中で黒ヤギは平然としていた。


「一つ確認したい」


呟く黒ヤギに思わず銀ヤギも校長も息を呑む。


「これが全力か?」


その言葉に校長から冷や汗が出てくる。


「まだ全力ではない」

「それなら、よかった。このままでいてくれ。俺とあんたで上下を決めて欲しくないからな」


その言葉に校長は威圧を止めた。


「は?」


意味がわからないとまじまじと黒ヤギを見るが彼はどこと吹く風。


「だから、俺たちの実力じゃなくてあんたの生徒と銀ヤギの力で比べて」

「へ?」


続いて出てくる言葉に銀ヤギが絶句した。


「なるほど、なら君達なら同じ自分を育てられる今いる自分より強いと?」

「さぁ?強い奴もいれば弱い奴もいる。けど刺激にはなるだろ。そして、銀ヤギは俺が強くする」

「それができると?」

「知らん、だが俺たちの価値をあんたに示すならこれしかなくてな」


残念ながらと首をすくめる黒ヤギを見て校長は納得する。


「ふはっはっは、なるほど君は居場所が欲しい訳か。ならば、こちらも用意する駒は君達の中にいる存在にしよう。そう、黒野でいいかい?」

「へぇ、いいね」


そうして二人の話し合いが続いていく。

一人、


気絶した銀ヤギを置いて…

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