始まりはやっぱり出会いだろうか?7
「みんな、どうやらこれが事実みたいなの」
クラス総勢27人に三谷は黒ヤギに言われたことはを説明していた。
深刻な空気が支配する。
教師である井筒 雲雀はこのクラスの雰囲気を見て何もできなかった。
彼女もまた戸惑っている人間の一人なのだ。
「ま、待ってくれ…もう一度説明を頼んでいいか?」
そんな中で一人の男子生徒が恐る恐る聞き返す。
彼は良く四宮に的確なツッコミを入れることで有名な男子生徒、七瀬 流風(ななせ るか)。
金髪に染めた髪と人に少し威圧感を与えてしまう顔が特徴の普通の男子生徒だった。
「そうね。言ってしまえば私たちは別世界いえ、正確に言うなら私達が知る時間軸とは違う時の日本に来てしまったの」
「要するに平行世界ってことだろう?」
「端的に還元するとそうなる」
「そして、さっきの話からして…ここにも俺達となる人間がいるってことだよな」
「…そうなるわね。この世界には私達とは別で私達となる人がいるのよ」
三谷の言葉に全員が息を呑む。
全員想像する。
目の前にいるのは自分じゃない誰か…いや、正確には自分である。
同じ顔した誰かが自分の家族と共に幸せそうにしている。
いや、正確にはそれが正しい形なのだ。
しかし、誰もがそう思っていても思ってしまう。
奪われた
と。
その沈黙を破る者がいた。
黒野 克樹は三谷の元に来て前に立つ。
「はぁ、委員長急ぎすぎだ」
「でも…」
「逆に聞くがあなたの居場所はありませんって急に言われて納得できるか?受け入れられるか?絶望しないでいられるか?」
「…いや、それとこれとは」
「同じだ」
黒野は口で三谷を黙らせる。
そして、静かに告げる。
「言ってしまえば俺たちはこの世界では異端者だ。本来いるべきはずのない人間だからな」
その言葉にクラスメイトの半分ほどが目を伏せ耳を塞ぐ。
聞きたくない認めたくないという思いがその行動を最適解とした。
しかし、黒野はそれを許さない。
「耳塞いでる者の耳を開けろ」
「黒野!あなたさっき言ったでしょ!これ以上追い詰めるような…」
「お前が言わなきゃこうなってない」
「…う…」
黒野の言葉に三谷は言い返せない。
彼女も話すのが早すぎたと後悔していた。
見知らぬ大地という苦難を乗り越えたクラスメイトを彼女は気付かぬうちに過大評価してしまった結果起きたことと言える。
故に彼女が責める資格なんてありはしない。
「一つ聞く。お前達は死んだのか?」
「…そんなの!帰る場所が無ければ死んだと同じだろ!」
「本当にそうなのか?」
「あーそうだよ!当たり前だろ」
「そうよ!私達は帰りたくて頑張ってきたのに」
西野という男子生徒と上原という女子生徒が代表して叫ぶ。
反面、黒野は内心は笑っていた。
「お前達は独りか?帰る場所は本当にないのか?」
「何が言いたいんだよ!」
「俺たちは異端児だが、世界から否定されたわけじゃないってことだよ。今まであいつがしてきたことを思い出してみろ」
黒野はそれだけ言って飽きたと言わんばかりに欠伸をしながら自分の部屋に戻っていくのだった。
全員、彼の言葉を考える。
そんな時、一人の少女が玄関から戻ってくる。
「マスターは帰って…ませんね…って、皆さんどうしました?」
あの日、四宮 矢木と出会った少女が現れるのだった。
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