父と妹

すっかり松田さんの話になってしまったが、今私の一番近くにいるやっかいなおっさん、それは父だ。

どれだけ話し合っても自分の考えから抜け出せない人。

一番大切に思っている家族に「大切だよ」と伝えられない可哀想な人。


父から愛情を感じないわけではないし、ここまで養い育ててくれたことを感謝している。

大学まで出してくれ、思いつきで留学したいと言った時もあっさりお金を出してくれた。

家計は苦しかっただろうに。


ただ真剣な話や愛を伝えてもらったことは一度もない。


父と一番真剣に話したのは妹が大学を中退すると言い出したとき。

妹は小さい頃からいつも何を考えているのか謎だった。

でも大人になってからは妹とはよく喋るようになったし

7個も年下とは思えないほど私の気持ちを理解していて、私は親友のように思っていた。


そんな妹がまた自分の気持ちを言わず、

後何週間かで卒業のタイミングで大学を辞めると言う。

鬱状態だったと思う。いつ自殺してもおかしくない様子だった。


私は母、祖母、父と何度も話し合い、家族それぞれ色んな意見や葛藤があったけれど

こんなときこそ妹の一番の味方でいようと話した。


父とあんなに長電話をしたのは初めてだった。

親として今後の妹の人生とか心配で

言いたいこと、こうした方がいいと思う気持ちはたくさんあると思ったが

今、妹の命あることが有難いと思おうよと何度も話した。

電話では気持ちが通じ合ったと思ったが、次にみんなで話した時にはまた

自分の理想を押し付けた物言いにがっかりした。


そして色々あり、妹は大学を辞め、周りが勧めた不本意な就職をした。

そのことはわかっていたので、なにかと力になりたいと気にかけていた。


だが、結局仕事を辞め実家に出戻った妹は

水商売のバイトを始めた。

母はさらに疲弊し、妹が夜に出勤する度に涙を流していた。

父にはその事実が明かされることはなかった。


もし妹が本当にやりたいことがそれなら応援しないこともなかった。

ただ、実家に寄生し、反抗する子どものような態度で

水商売に出かける姿を忘れることはできないし

母を毎日泣かせていたことも許すことができない。

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