関東地方の大友皇子・耳面刀自妃の伝承
葛西 秋
第一章 大化の改新
第1話 大化の改新前夜
古代日本史において、政治体制の大きな転換期として知られているのが大化の改新である。
大化の改新を端的に云うならば、弥生時代以降、古墳時代を経て日本列島で大きな勢力を得たヤマト王権が大陸の律令を取り入れることにより天皇を頂点とした律令制で成り立つ日本という国へと変貌するための政治改革だったと云えるだろう。
大化の改新が行われたのは孝徳天皇の時代であると日本書紀にある。しかし大化の改新を始めるきっかけとなった乙巳の変は、中大兄皇子と中臣鎌足が起こしたクーデターである。孝徳天皇が王位(この時まだ天皇の称号は使われていない)についていたとしても、政治の実権は中大兄皇子と中臣鎌足側にあったと考えられている。
孝徳天皇と中大兄皇子は叔父と甥の関係にある。孝徳天皇の前に王位にあった皇極天皇が孝徳天皇の姉であり、中大兄皇子の母であった。皇極天皇はさらにその前に在位した舒明天皇の皇后でもあった。
舒明天皇の前には推古天皇が王位にあったが、この二人の天皇の間の血縁は遠いものだった。異母兄弟同士での婚姻を重ねてきた王族がとうとう跡継ぎに行き詰まり、遠縁の王族を必要としたのである。
婚姻を非常に近い血縁で繰り返していたこと、中央ではなく遠縁の王族を王位継承者に選ばざるを得なかったことの二つに共通する原因として、王族を脅かす権力を持ち始めた蘇我氏の存在がある。王族に娘を娶せて王族の血縁内に食い込もうとする蘇我氏を退けるための近縁婚であり、蘇我氏の影響力が及んでいないからこそ遠縁の王族を選んだと考えることができる。
一方で、推古天皇の時代において蘇我氏は王権の強力な協力者だった。
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