フェンリル
なので私はスキル「アイテムボックス」を発動した。
――動物は基本。臭い物を食べたりしない。理由は簡単で臭い物は毒である可能性が高く、そして何より美味くないのが相場だ。……っという事を本能的に知っているからだ。
そして相手は巨狼のフェンリル。間違いなく普通の犬より鼻が利くだろう。――となれば。
『ッ!?』
フェンリルは私に噛みつくのを中断した……どころかアゴを跳ね上げていた。それはまあそうだろう。
しかしま、スキル「アイテムボックス」とはこうやってうんこ臭を使って敵を撃退するスキルだったか……。
フェンリルは前脚で鼻を押さえながら。
『おのれ人間ッ! 何をしたッ?』
「うんこ」
『やはりかっ!?』
やだな。冗談ですよ。
『我に喰われそうになって咄嗟にうんこをするとは……貴様只者ではないな?』
いや、私はただの退職代行の代行。つまりどこにでもいる一般人。とゆーか別にうんこしてないし。
『興味が沸いたぞ人間。一旦貴様を喰うのは保留して取り憑く事にした。だが、つまらん人間だと確信した時、その時は遠慮なく貴様を喰う』
あーそのパターンね。
『では人間。早速だが我に名前を付けよ』
え? フェンリルって名前じゃないの? ヨルムンガンドとかヘルってアレ名前でしょ? でもまあアレか……フェンリルとかヨルムンガンドって別に意味がある言葉だから、そーゆーんじゃなくて固有の名前が欲しいのか……じゃあ。
『伝説の幻獣フェンリルに名前を付けてください』
「味噌汁」
『ほぅ? ミソシルか……ワインの名前のようで悪くないな』
いやワインじゃなくて味噌汁だっての……まあル・ミソシとかだったらギリワインっぽくはあるけど……。
『良し。気に入ったぞ人間、我は今日から味噌汁だ』
え? いいの? じゃあこれからは北欧神話のラストで最高神のオーディンがフェンリルに丸呑みにされるってシーンは私の場合、オーディンが味噌汁に丸呑みにされるって考えていいのか。
※※※
今回のお題
「伝説の幻獣フェンリルに名前を付けてください」
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