第22話「目には見えない守護者達」
「血液に例えれば、修験道はリンパ球だ!」
ホエールウォッチングの船長に気に入られ、船長の家に泊まることになったタケゾウ。船長も神仙道に興味があるようだ。
🍶🍶🍶
「高知では、手酌は禁止だ!お互い注ぎあうんだ!」
船長は酒が強いようだ。
奥さんが刺し身を持ってきてくれる。
奥さんは猫好きなようでテトラと遊んでいる。
「修験道は役小角を祖として密教より古いんだ。明治時代に政府から修験道が禁止されたが、いまだに生き残っている」
「船長も修験道なんですか?」
「オレは船乗りだから。在家で家に伝わる行法はやっているが、団体には所属していない。
タケゾウには初耳の話が多い。
タケゾウの家も道家だが、その系統などは聞いたことは無かった。
「役小角は修験道の開祖だが、同時に仙人の開祖とも言われている。その弟子も行者になる者と仙人になる者もいたようだ」
「あんまり、わからないですね……」
「そうだろう。普通わからん。例えるなら、幹細胞だ! 元は同じでも分化すると、赤血球、白血球、血小板に分かれる。わかるか?」
「あっ、いえ、ぜんぜん……」
「だろうな、お兄ちゃんは、まだ、若い。これから似たような話を何度も聞いていくうちにわかるようになる、はずだ」
「はっ、そうですか」
タケゾウには医学知識がない。血液に成分があることも知らない。
「海ってのは広くて綺麗だろ!?」
「それは、そうですね」
「でも、ウイルスや病原菌はいる。陸上ほどではないだろうけどな。魚も死ねば腐敗する。これは、わかるか?」
「それは、生き物の宿命ですね」
「そうだ。全ての生き物の業だ。例外は南極くらいかな? しかし、生きている間は白血球によって守られている。もし、体の中から白血球が無くなれば、数日で肺が腐敗し始めるといわれている。肺が腐敗すれば心臓もダメになり、血液も腐敗する」
「白血球と言うのは血液なんですか?」
「そうだ、体を守る白血球は血液からみたら、わずか0.1%なんだが、これが体を守っている。いわば、オレ達みたいな修験道であり神仙道なんだ」
「そこがよくわからない」
「0.1%の白血球は、さらに分かれる。傷が治る時に白い膿が出るだろう」
「白いって、ニキビをつぶした時に出るやつですか?」
「そうだ。あれは病原体を食べた自然免疫の死骸だ。だいたいは好中球だが、分類は顆粒球と言って3つに分かれる。好中球、好酸球、好塩基球だ」
「はぁ、白血球は3つに分かれるんですね」
「いや、違う。顆粒球が3つに分かれる。他にマクロファージとリンパ球に分かれる。さらにリンパ球は3つに分かれ、T細胞、B細胞、NK細胞に分かれる。T細胞は、さらに分かれて、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、レギュラトリーT細胞になる。さらに細かく分かれ、まだ発見されてない細胞もあるらしい」
「いや〜、もうわかんないですよ」
「そうだろう。元は同じで全部、体を守る白血球だがいろいろ分かれる。人は目には見えないウイルスや細菌に常に襲われてる。しかし、目には見えない白血球に守られているんだ」
「それは、神様、仏様のようなものですか?」
「そうとも言える」
「現実世界でも神や仏を目指し修験道や神仙道をするものが昔からいる。現代でもヒーローに憧れ、格闘技をする者がいるし、住民を守る警察官や自衛隊、救急隊、医師や看護師、介護士もいる。さらに、ゴミを収集するのも大切だ」
「なんとなく、言いたいことはわかるんですが……」
「いまは、わからんでもいい。そのうちわかるようになる。神仙道だろ? 般若の智慧があるはずだ」
船長の話は、タケゾウには、ぜんぜんわからなかったが、なんとなく、世の中を守る仕組みが複雑にあることはわかった。
🙏🙏🙏
朝起きると、船長が布団の上で仰向けになり手足を動かしている。
左手を上げ、右手を上げ、右足、左足と上げたり下ろしたりと繰り返している。
(導引とも言えないが、なんだろう? 不思議な動きで見たことがない)
タケゾウは興味深く船長の動きを見ていた。
左手を上げ手をグーパーグーパーグーパー、3回握って左手をさげる。
右手を上げ同じように3回握って手を下げる。
呼吸に合わせて手を握っているのか? 握るのがゆっくりだ。
右足を上げて、足首を伸ばす、曲げる。これも3回、呼吸に合わせているようだ。
左足も同じようにして、また右手に戻る。
「お兄ちゃん、おきたかい?」
船長がじっと見つめるタケゾウに気付いた。
「あっ、おはようございます。それは行法ですか?」
「これか、これでは行法とまではいかないが、けっこう重要なんだ。年取ると心臓の動きが怪しくなって、調子の悪いエンジンみたいになる。だから、こうやって手足の血流をよくしてやると、血液が心臓に流れて調子が良くなるんだ」
「あ〜っ、前にハンドグリップと青竹踏みをすると体調がよくなったという人がいましたが、それですか?」
「そうだな、似たようなもんだ。他にもゴキブリ体操なんてのもあるが、手足の血流をよくするのは同じだろうな」
タケゾウも同じようにやってみる。
「お兄ちゃんがやっても柔軟な筋肉では、ただの体操だ。年を取ると足の筋肉が縮むんだ、それを伸ばすと導引になる。順なれば人となり、逆なれば仙となるってな」
船長は仰向けに寝たまま右足を上げると右手を太ももの裏にあて足を伸ばしている。
「これとか、足を上げたままふくらはぎをもむとかな。年を取ると膝がまっすぐに伸びなくて『くの字』になる。膀胱も固くなるし、血管も心臓も固くなる。不思議と固かったあれは柔らかくなるがな、ハッハッハッハッハ」
船長は右足を上げたまま、両手でふくらはぎをもみ、膝の裏をもみそのまま両手で膝の裏を押さえて足を伸ばしている。ついでに太ももの裏ももんでいる。
足の揉み方はわかったつもりだったタケゾウだったが、船長のやり方は、まったく初めてのもだった。
📜📜📜神仙道ワンポイント。
季節的なもので、気圧によって心臓の動きが速くなったりします。
病院に行って薬をもらうのが早いですが、毎日ではない人なら手足の導引がお勧めです。
下に住む人が夜中に銀玉鉄砲で天井を打ってきたら、頭に来て心臓の動きは速くなりますけどね……
管理会社と警察に相談しましょう。
天井に近づけて銀玉鉄砲を打つとBB弾の丸い凹みが残り証拠になるんですが、残念ながら部屋には入れないでしょう。
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