サークル
***
「はぁ〜〜? 晏唐島ぁ?」
また辺鄙なとこに飛ばされるなぁ、と吐き捨てたのは年齢は一つ下だが今の同級生である相園爽。
そして机の向かい側でノートパソコンを触るのは一学年下の後輩である馬場譲治である。
譲治はこちらに興味を示すわけでもなくずっと画面を睨みつけている。
何かの授業の課題だろうか。そんなことを考えながらアトリは500mlのパック紅茶を飲みながら頬杖をついた。
「うちのサークルも人少なくなって。その原因があのジジイなんて思ってもないというか気にしてもいなさそうだけど、今度の被害者はお前かぁ」
ざまぁないな、と言わんばかりに小馬鹿にしたような表情を向けてくる爽を見てアトリは怪訝な表情を見せた。
だが、すぐにも何かを思いついたように意地悪い表情を浮かべるのだから爽は背筋をゾッとさせてアトリを睨みつける。
「お生憎だけどお前らも被害者だぞ」
「は⁉︎ ……名指しか?」
嘘じゃないかと疑うような眼差しを向けてくる。
そんな視線を向けられてもアトリは特に気にした様子も見せず、おちゃらけたように肩を竦めてみせた。
「名指しだよ、名指し。俺とお前らで晏唐島を調べてレポート提出しろってよ」
詳しくはこちらを。と嘯きつつ千条から受け取った資料を机の上に置いてやれば爽はそれを手に取って文字の羅列を読み始めた。
譲治はパソコンを閉じると立ち上がり爽の後ろへと移動して彼の肩に手を置いた。
二人して真剣な顔で資料を読み続けているのを他所にアトリはスマホで晏唐島について調べるが、どこの情報も全て眉唾物過ぎる。
噂や都市伝説に過ぎないどれもこれもフィクションでしかない文字の羅列に嫌気がさしてしまう。
詰まるところ、どのサイトも信憑性がないのだ。
写真は本物が多いが、それでもその後に綴られる文字達は所詮ただ並べられているだけのものに過ぎない。頭を抱えたくなった。
「けど、教授もよくこんなの依頼してきたな。依頼というか課題か」
ため息を漏らして呆れたように呟く爽に譲治も顔をあげてアトリを見た。
二人が視線を合わせればアトリはニヤリと笑みを浮かべるのだから譲治は爽の方に視線を戻した。
「けど、夏休みの暇つぶしにはなるだろ?」
「嫌な噂しかないのに行くかよ。俺はパース」
そう言って爽は資料を譲治に押し付けた。譲治は資料を受け取るとそのまま席に戻って行きつつも「おもしろそーっすね」と言葉を漏らす。
その言葉を聞いてアトリはぐるん、と勢いよく譲治の方を見て目を輝かせた。
「そうだよな⁉︎ ほら譲治は行くぞ? 長い夏休み、彼女もいないお前は一人寂しく過ごすことになるけどいいんだな?」
「うるせぇな……そこら辺は俺の勝手だろ、つか譲治も正気か?」
怪訝げに顔を歪めた爽の言葉に譲治は特に変わらない様子で首を傾げ「何がっすか」と言葉を漏らす。
「島のことだよ」と爽が眉を顰めながら言えば譲治は特に表情が変わることもなく二人の方にノートパソコンを向けた。
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