教授の、
この男は日本歴史文化サークルの顧問であり優しいとか癒し系だとか言われているその裏では、日本で起こる霊現象を調べるためには危険を顧みないような行動をするような男なのである。
禁足地と呼ばれるような鬱蒼とした雑木林で五日間行方をくらませたと思ったら六日目にひょっこりとキャンプセットを持って雑木林から出てくるし。
元精神病患者の隔離施設を深夜から朝方に掛けてサークルにいる生徒と一緒に練り歩くし。
水子を祀る神社だったらしい土地にある屋敷らしき建物でキャンプをし始めるし。
若いカップルが焼身自殺したらしいトンネルで幽霊を発見するまで帰れま10をやり始めるし。
っていうか、これまで巻き込まれたサークルのメンバーの過半数は教授の無茶振りに付き合ったせいで半分以上潰れてんだよなぁ……
だからこそ、目の前にいるこの男、千条一樹という人間からの無理難題は命懸けになる覚悟であるのだ。
生唾を飲み込みながら言葉を待っていると千条は机に置いてあった数枚の資料に目を向けてそれを手に取った。
「うーん……もう直ぐ夏休みだけど、何か予定とかってある?」
「え、ないですケド……」
急に何を聞いてくるのかと眉を顰めれば千条はにこやかな笑顔を浮かべてから頬杖をついて机に資料をアトリの前に置いた。
「彼女とかは? 僕は奥さんと子ども達と一週間海外旅行に行く予定だよ」
「嫌味っすか……? 彼女とかいないですよ」
目の前に置かれた資料を手に取る前に、その題名が視界に入った。
『五年前に発見された晏唐島について』
それは、今から約五年前に発見された東京都に所属する太平洋に位置する小さな島の報告書だった。
ネットではホラースポットだと有名で、既にその島に見学に行ったと思われる四、五人が行方不明となっている。
警察や救助隊総出で捜索されたが見つからず、既に死亡したものとされてしまっている。
噂では晏唐島で何かに魅入られて行方をくらましたとか、元々自殺するために晏唐島に行ったとか根も葉もない噂が横行している。
そして晏唐島に言って帰ってきた者の中には『化け物を見た』という者もいるとかなんとか。
全て噂でしかなく信憑生もなく、研究者や地質調査員などが調査のために島に何度も訪れているがそんな生物を発見することもなく。
色々と昔の建物がそのまま残っている状態の島であるということから月に何度か観光目的で島へ行く人がいるらしい。
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