うみねこのなく頃に、みたいな魔法の世界で密室殺人の推理ものが書きたかったので書きました。誰か読んでください
@syoremi
[1章]第1話 第1の事件。火の間、全焼
プロローグ
この世界には、魔法が存在する。
それは単なる幻想ではなく、制度として、法律として、日常の一部として存在する。
そして魔法と共にある世界では、真実さえもまた、魔法に左右される。
本作では、傍点の付いた文章を**“真実”**と定義する。
それらは絶対に覆らない、絶対の真実である
それ以外の供述や描写は、信じるも疑うも、あなた次第。
嘘と真実が交錯する物語へ、ようこそ。
⸻
幕間──黒き少女の言葉
「──さあ、幕を上げましょう」
少女の名はアトリー。
背丈は小柄で、黒のドレスに身を包み、どこか人形めいた雰囲気を持っている。
月明かりの下で、ふわりとマントを翻すその姿は、まるで舞台に立つ役者のようだった。
彼女の目は、まっすぐに“読者”を見つめている。
「今回の物語は、密室で起きた焼死事件──そして、犯人は存在しないの。
だって被害者を殺したのは、“禁書の呪い”だったのだから!」
アトリーはくるりと回り、指先で炎のような魔法陣を描く。
「信じるか信じないかは、あなた次第。
でも一つだけ保証するわ。
この物語の中に散りばめられた“傍点の真実”は、決して裏切らない」
⸻
──その夜、禁書図書区は、不気味なほど静まり返っていた。
冷たい石造りの回廊を、革靴の音が規則正しく響く。
軍服を身に纏い、胸に銀の徽章をつけた男──グンジ少佐は、懐中時計を一瞥しながら黙々と歩き続けていた。
□人物名:グンジ
・身分:軍属・警備指揮官。階級は少佐。
・性別:男性
・性格:寡黙で厳格。任務には忠実。部下にも厳しいが、信頼は厚い。
・見た目:中年の壮年男。浅黒い肌に短髪。鋭い目つきと無駄のない動作が特徴。
・関係:現場の第一発見者。過去に数回、貴族ハイと公務で言葉を交わしている。
・概要:かつては戦場に立っていた実戦軍人。今は図書区の警備任務を預かる立場。偶然ではなく「異変を察知して」扉の異常を発見した。
彼は毎晩同じ時間に、図書区全域を巡回していた。
魔法も秘術も、信用していない。己の目と耳だけを信じている。
この夜も、何の異変もなく──そう思っていた。
しかし、火の間へ続く回廊に足を踏み入れた瞬間、鼻先に──
焦げた紙と焼けた髪の、鋭く刺すような匂いが漂ってきた。
グンジは立ち止まると、懐から取り出した魔力測定器に目を落とす。
──数値は、魔力感知レベル3。
それは封印結界の作動を意味していた。
「……火の間の、結界が発動しているだと……?」
グンジの顔が、わずかに険しくなる。
結界が自動で作動するのは、内部で魔力干渉があった時、あるいは禁書の異常反応が起きた時のみ。
──これは、ただごとではない。
彼は腰の短剣を確認し、慎重に扉の前へと近づいた。
火の間──そこは禁書の中でも“高危険度”とされるものが保管されている、特別封鎖区画だ。
扉は、金属と魔術障壁の二重構造。
そのすぐ前に立つと、黒い刻印が淡く浮かび上がっていた。
それは結界の発動による兆候。中で何かが起こった証だった。
「……この扉、内側から封印が掛かっている。……鍵も魔法封も、正常作動中……完全な密室だ」
グンジは手袋をはめ、扉に触れる。
冷たい金属の感触。そして、その奥から、まだ微かに残る熱気。
彼は静かに、図書区の管理者へ通達を送り、解除手続きの許可を取った。
そして──
ギィ……と重々しい音を立てて、火の間の扉が開く。
中にあったのは──
一面の黒と灰だった。
壁に焼け焦げた痕が走り、床には溶けかけた魔導書の残骸。
そして、中央の魔法陣跡と思しき焼け跡に、人型の灰が崩れている。
そこには、焼け焦げた布切れがわずかに残り、人であったことを僅かに主張していた。
「……これは……」
グンジの視線が鋭く細まる。
即座に鼻と口を覆い、足元に目を走らせる。
爆発の形跡はない。破壊された装置もない。
だが、これほどまでに強烈な焼失現象──しかも、ほぼ骨まで消し飛ばすほどの高熱が、ここで発生したことは間違いない。
「……異常事態。即時、魔導捜査班の招集を」
彼は懐の通信具を握り締め、抑えた声で命じた。
──こうして、魔導探偵・ミヤトラと補助役アトリーが呼ばれることになる。
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