第4話 父はすぐにウソをつきます

 僕の父は釣りが大好きです。僕も小学校の高学年になった頃から、海釣りに連れて行ってもらえるようになりました。


 なぜ高学年になってからかというと、海釣りは父の友人も一緒に行くのですが、崖のようになった場所を通って行く釣り場なんです。そこは、根魚がたくさん釣れる場所で、父のお気に入りの場所なのですが、危ないので、なかなか連れて行ってもらえませんでした。


 しかも、着いたらロープで父に繋がれます。流れが早くて、落ちたら登る場所もない……まぁ、子供が行く場所ではありません。


 ある日、その場所へ行くと、雨の後だったのでいつもより流れが早く、仕掛けが流されてしまうような状態でした。下に沈まないといけないオモリがなぜか見える……。早朝に着いて昼ごろまで頑張りましたが、結局1匹も釣れませんでした。


「せっかくきたのに残念だったね」と話しながら車に戻ります。


 すると父は「近くにある魚屋に寄って帰る」と言いました。まぁ魚があると思って、母も食事を用意していないかも知れません。店には僕もついて行きました。


 そこの魚屋は漁師さんが経営している店で、僕たちは釣れませんでしたが「朝に釣ってきた魚だ」と漁師さんは言います。あんなに流れが早かったのに、さすがプロ。


 漁師さんと話をしながら、釣るはずだった根魚と、大きめのタコを買いました。タコは家族全員の好物ですが、結構高いんですよね。


 タコは唐揚げにしてもらおう、と考えていると、父は「おい」と言いながら、僕の頭をつつきました。そして、真剣な顔をして言いました。


「買ったって言うなよ」

「……え?」


 漁師さんが釣った魚を、父は自分が釣ったことにしようとしているようです。いつものことですが、呆れて言葉が出てきませんでした。


 ちなみにこれは、1回だけではありません。数えきれないほど、僕は何度も父のウソに付き合っています。


 ただ、バレていないと思っているのは父だけ。母はちゃんと気付いています。本当に隠したいのなら、買った時のビニール袋はどこかで捨てないと、我が家にあるのと違うので、バレますよね(笑)


 本当に、困った父です……。

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