ロンダム伯爵家①

数日前――


「ハレアちゃん!パパがハレアちゃんに一番釣り合う最強の結婚相手を決めてきちゃったよ~ん」

 そう言ってハレアに頬ずりしようと顔を近づけ全力で嫌がられている彼はラルベス・ロンダム伯爵、ハレア・ロンダムの父である。

「ちょっ!パパ!髭痛いからやめっ!」

 ロンダムは嫌がられても懲りずにハレアに抱き着こうとする。

「やめろって言ってんだろぉぉぉおおおおお!!!!!」

 ハレアは指を『パチンッ』と鳴らすと手からは凄まじい量の水が渦を巻いてラルベスの頭部へと巻き付いた。

「ハレッアッ!ちゃあっ!ゴボッ!パパッッッ!死んじゃッ!ゴボボボボボッ……」

「やめてって言われたらやめるのなんて幼児でも分かるのに!パパはいつも!」

 ハレアがもう一度『パチンッ』と指を鳴らすと水は床へと落ち、ラルベスは全身ずぶ濡れになった。

「そうですよ、お父様。ハレアはもう18歳なんですから。立派な女性ですよ、いつまでも子ども扱いはやめていただきたい」

 そう言いながらハレアの腰に手を回し、自分の胸元へと抱き寄せるソレート・ロンダム。

「お兄ちゃんもやめて!距離が近い!」

 ハレアは兄であるソレートのことも手で押し、突き放した。

「ねぇね、パパとにぃにとなんかより僕と一緒にお庭で遊ぼ?お池におじゃまじゃくしいるんだよ?」

 ハレアは目線を下げるとスカートを引っ張る弟のジュード・ロンダムが彼女へ上目遣いをする。

「そうなの?じゃあ一緒に行こっか」

 ハレアは目線を合わせるためにしゃがむとジュードは彼女に抱き着いた。

 そして、ハレアからは見えない死角で父と兄に向って口角を上げて笑う。

「勝った」

 声には出してないが、彼らに向けてジュードが言い放つ。

「ぉおん!?何がおじゃまじゃくしじゃ!?10歳がまだまともに発音できないんか!?ぉおん!?!?」

 ジュードに向けて威嚇する大人げない21歳児、ソレート。

「お兄ちゃん!?ジュードはまだ子どもなのよ!」

「子ども!?10歳は立派な大人ですぅ~!俺はおじゃまじゃくしなんて言うのは3歳で卒業しました~!」

「そうだぞ!パパなんて10歳の頃はおたまじゃくしを水魔術で空中浮遊させて遊んでたぞ!」

「はっ!?なんの自慢だよ!」

「僕だってやろうと思えばおじゃまじゃくし空中浮遊させられるもん!」


『パンッ!』『パンッ!』『パンッ!』



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