黒い縁

@Kutsu

封印された悪魔の目覚め

バスケットボールが舗装路に当たる鋭い音が校庭に響き渡る中、レンは相手を抜き去り、アドレナリンで筋肉が燃え上がる。稲妻のように手が動き、きれいにボールを奪った。素早く方向転換し、ゴールに向かって飛び込んだ。ボールは完璧な軌道でネットを突き抜けた――シュッ。周囲から歓声が沸き起こり、友人たちは背中を叩き、称賛の声は溢れんばかりだった。


レンは自然と笑みを浮かべた。最近は見られなかった、珍しい軽やかな笑みだった。


しばらくして、玄関のドアがきしむ音を立てて開き、レンは中に入った。古びた木材と使い古された家具の香りが彼を迎えた。


「レン、帰ってきたか。今日の学校はどうだった?」と、台所から叔父の声が聞こえた。


レンは額の汗を拭きながら靴を脱いだ。「よかったよ。またバスケの試合に勝ったんだ。」


叔父の顔が和らぎ、どこか安堵したような目でレンを見つめていた。 「よかった。ご両親が亡くなってから…ほら、幸せそうに見えるじゃないか。墜落事故以来初めてだ。」


レンは歯を食いしばった。2ヶ月。両親を亡くした飛行機事故から、たった2ヶ月しか経っていない――少なくともそう聞かされていた。詳細を明かさない沈黙、親戚の突然の冷淡さ、叔父が彼らの財産と金銭の全てを掌握しているという事実――それらは彼に毎日、苦い思いをさせていた。


一方、薄暗いオフィスでは、黒スーツを着た警官がマネージャーに身を乗り出し、低く切迫した声で言った。「隊長、少年を見つけました。」


「船です」マネージャーは鋭い目で言った。


「ここに連れてきましょうか?」


「承認しました。警備は厳重です。新しい宿舎の準備をしてください。」


警官はうなずき、電話をかけた。


「セクター9、156号棟、Bブロックから少年を連れてきてください」と指示した。


電話の向こうから、荒々しい声が返ってきた。「いくら払うんだ?」


「好きなものを持っていっていい。ただ、彼を…生かしておいてほしいんだ。」


その夜、レンの静かな部屋に長い影が伸びていた。突然、くぐもった足音が部屋に入ってきた。反応する間もなく、後頭部に重たい衝撃が走り、まぶたの裏で星が爆発した。


暗闇が彼を完全に飲み込んだ。


レンの目がようやく開いた時、見慣れたものは何一つなかった。冷たい金属と湿ったコンクリートの古臭い匂いが鼻腔を満たした。下に敷いた毛布のざらざらとした感触も、頭蓋骨のズキズキとした痛みを和らげるには至らなかった。


「ここはどこだ?」彼は嗄れた声で囁いた。


ドアがきしむ音を立てて開いた。背の高い人物が入ってきた。黒い制服を着た警備員だ。


「起きましたか、旦那様。隣の部屋へどうぞ」と、警備員は早口ではあったが、決して不親切な口調ではなかった。


レンは狭い廊下をよろめきながら進み、筋肉が硬直したまま隣のドアを押し開けた。


中には男が机の後ろに座り、眉間に皺を寄せ、鋭い目をしていた。彼は立ち上がろうとはしなかった。


「レン、起きましたか」と男は静かに言った。


「どうして私の名前を知っているのですか? なぜここにいるのですか?」レンの声は混乱と恐怖で震えていた。


男は壁に取り付けられた大型スクリーンを指差した。スクリーンがちらつき、グロテスクで血まみれの生き物の姿が浮かび上がった。ねじれた角、剃刀のような爪、悪意に燃える目をしていた。スクリーンの下にはただ「悪魔」とだけ書かれていた。


レンは胃がひねられるような感覚に襲われ、唾を飲み込んだ。「何…あれは何だ?」


「あれは」男は落ち着いた声で言った。「悪魔だ。遥か昔、今から何世紀も前、この惑星は悪魔に支配されていた。だが人間が強くなり、支配権を握った。悪魔は心を持たない獣だが、ただ一匹だけ、意志のみで創造された最初の悪魔がいた。その名はサクゴだ」


レンは身を乗り出した。目に疑念が浮かんでいた。


「サクゴは沓の力を持っていた」男は続けた。声はかすれ声に近いものになった。「稀有な力だ。人間でさえ、誰もが少しずつ持っている。だが、彼はそれをあまりにも膨大に振るい、誰も彼を倒すことはできなかった。彼は一万年も生きていた。そしてついに、老いが彼を滅ぼしたのだ」


「では、なぜ私が関わっているんだ?」レンの声は震えていたが、鋭かった。


「予言がある。10世紀後、サクゴの力を持った子供が生まれる。魔王が転生するための器だ」


レンの笑い声は苦々しく、空虚だった。「どうして私がこんなことにこだわらなければならないんだ?」


男の目は険しくなった。「拒否すれば、サクゴがお前の弱い魂を支配し、世界は滅びるだろう。」


レンは苛立ちを募らせ、首を振った。「なぜ俺が? なぜ今?」


「人類が生き残りたいなら、この道を選ばなければならない。」


レンは腕を組み、鼻で笑った。「馬鹿げている。」


男は突然の行動で机の上の装置を起動させた。青い炎が噴き出し、彼の周囲を渦巻き、揺らめく影を落とした。


「これがクツだ。」彼は簡潔に言った。


レンの目は大きく見開かれた。「もしこれが現実なら…この力が欲しいかもしれない。」


「よし。」男は言った。真剣な表情にかすかな笑みが浮かんだ。「では、名前を登録してもいいか?」


「どこに登録するんだ?」レンは、思わず好奇心が掻き立てられながら尋ねた。


「デーモンハンター高校だ。」男は答えた。 「オーラを覚醒させ、訓練し、悪魔を狩る方法を教える場所です」


レンの声は和らぎ、稀に見る希望の光が差し込んだ。「入ります。他に行き場がないんです」


「私は葦月如月です」と男は立ち上がりながら言った。


「田中レンです」と声は落ち着いた。


如月はドアの方を指差した。「明日の朝までに身分証明書を用意します。今は休んでください」


レンは床に崩れ落ちた。ベッドで、新たな現実の重みが彼を眠りに誘った。

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