第17話 決断と未来への道
高橋家は、五人の女性の妊娠と、吾郎と五月の出生の秘密という、二つの大きな衝撃に打ちひしがれていた。リビングは、怒りや悲しみ、絶望の声に満ち、まるで地獄と化していた。吾郎は、その中心で、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
自分が、最も愛する姉である結月の子だった。そして、五月は、自分と双子の姉弟だった。その事実は、吾郎の心を深い絶望と、言いようのない嫌悪感に突き落とした。吾郎は、五月との間に交わされた行為を思い出し、自分のしたことの重さに耐えられなくなっていた。
吾郎は、リビングから逃げるように外へと飛び出した。夜の闇の中を、吾郎はただひたすらに走った。どこへ向かえばいいのかも分からず、ただ、この深い絶望から逃げ出したかった。
その時、吾郎の携帯が震えた。画面には、美咲の名前が表示されていた。吾郎は、一瞬だけ躊躇したが、美咲からの連絡に、胸が締め付けられるような思いがした。吾郎は、美咲からの電話に出た。
「吾郎くん、今どこにいるの?」
美咲の声は、吾郎を心配しているのが伝わってきた。
「…大丈夫だよ。ちょっと、頭を冷やしてるだけだから」
吾郎がそう言うと、美咲は「わかった」とだけ言い、電話を切った。
吾郎は、再び走り始めた。しかし、どれだけ走っても、心の中の絶望は消えなかった。吾郎は、道端のベンチに座り込み、顔を両手で覆った。
「…俺は、どうすればいいんだ…」
吾郎がそう呟くと、吾郎の目の前に、美咲の姿があった。美咲は、息を切らしながら吾郎の前に立ち、吾郎の顔を心配そうに覗き込んだ。
「吾郎くん…」
美咲は、吾郎の隣に座り、吾郎の肩を抱き寄せた。その腕は、温かく、そして優しかった。吾郎は、美咲の優しさに触れ、心が安らぐのを感じた。
「吾郎くん…全部、話して」
美咲は、吾郎の言葉を遮ることなく、ただ静かに耳を傾けてくれた。吾郎は、美咲の優しさに甘え、自分の胸の内を全て話した。結月、皐月、芽依、五月との関係。そして、吾郎と五月の出生の秘密。
吾郎が話し終えると、美咲は、吾郎の顔を両手で包み込むように掴み、吾郎の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「吾郎くん…私は、吾郎くんのことが好きだよ」
その言葉は、吾郎の心を深く温めた。美咲は、吾郎の孤独を理解し、吾郎の罪を受け入れてくれた。吾郎は、美咲との関係の中に、結月や姉たちとの関係とは違う、純粋な愛と友情が混ざり合った、特別な関係を見出していた。
「美咲…俺は…」
「吾郎くん、もう謝らないで…私、吾郎くんのそばにいたい。それだけでいいの…」
その言葉は、吾郎の心に深く突き刺さった。美咲は、吾郎の孤独を理解し、吾郎を救ってくれる、唯一の存在だった。吾郎は、美咲を強く抱きしめた。
「美咲、俺と…結婚してくれないか」
吾郎の言葉に、美咲は驚きながらも、その瞳から大粒の涙を流した。美咲は、吾郎の言葉に、深く頷いた。
「うん…喜んで…」
二人は、静かに抱きしめ合った。それは、絶望の淵に立たされていた吾郎の心を救い、新たな未来へと導いてくれる、希望の光だった。
吾郎は、美咲との結婚を決意した。しかし、吾郎の心には、まだ解決しなければならない問題が残っていた。結月、皐月、芽依、そして双子の姉である五月、そして彼女たちが身ごもった子供たち。吾郎は、彼女たちと、そのお腹に宿った新しい命を、どうすれば幸せにできるのか。
吾郎は、美咲を抱きしめたまま、静かに目を閉じた。
この狂おしいほどの愛と、深い絶望の果てに、吾郎は、血縁を超えた新しい家族の形を模索し始めた。それは、吾郎の成長の物語であり、そして、五人の女性と、その子供たちを幸せにするための、新たな戦いの始まりだった。
吾郎は、美咲を強く抱きしめたまま、静かに誓った。
必ず、全員を幸せにする。
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