第14話 親友・美咲とのデートと共犯関係

 結月、皐月、芽依、五月。四人の姉たちとの関係は、吾郎の心を快楽と罪悪感の螺旋に深く沈めていた。夜が明けると、何事もなかったかのように振る舞う姉たちと、その様子を窺う自分。その繰り返しは、吾郎の心を少しずつ蝕んでいった。自分のしていることは、家族に対する裏切りであり、決して許されることではない。その思いが、吾郎の心を深く、深く沈めていく。


 そんな日々を送っていた吾郎は、精神的に追い詰められていた。だが、友人である美咲からの「吾郎くん、最近、何か悩んでる?いつでも相談に乗るからね」という言葉が、吾郎の心を救った。吾郎は、美咲との関係の中に、結月や姉たちとの関係とは違う、純粋な愛と友情が混ざり合った、特別な関係を見出そうとしていた。


 ある週末、吾郎は美咲からのデートの誘いに、心底安堵した。


「うん、行こう。美咲とどこか行きたいと思ってたんだ」


 二人は岳山神社へと向かった。岳南高校の隣に位置する岳山神社は、縁結びで有名であるため、学生たちのデートスポットや待ち合わせ場所になっている。吾郎と美咲は、鳥居をくぐり、石段を登った。参道の両側には、古い杉の木が並び、神聖な雰囲気を醸し出していた。


「ねえ、吾郎くん。何お願いしたの?」


 美咲は、お参りを終えた吾郎に尋ねた。吾郎は、少し照れながらも、「秘密だよ」と答えた。吾郎は、家族との関係をどうすればいいのか、そして、美咲との関係がどうなるのか、神様に問いかけていた。


 岳山神社からの帰り道、二人は他愛のない会話を交わしながら歩いた。学校での出来事、部活動のこと、将来の夢。美咲は、吾郎の話を真剣に聞いてくれた。吾郎は、美咲の優しさと、彼女の自分に向けられた真っ直ぐな好意に、心が温かくなるのを感じた。


「吾郎くん、最近、ちょっと痩せたみたいだけど、大丈夫?」


 美咲が心配そうに吾郎の顔を覗き込む。吾郎は、美咲の言葉に、胸が締め付けられるような思いがした。


「大丈夫だよ。ちょっと、考えすぎてるだけ」


 吾郎がそう言うと、美咲は吾郎の手をそっと握った。その手は、温かく、そして柔らかかった。吾郎は、美咲の優しさに触れ、心が満たされていくのを感じた。


 二人は、美咲の家の近くまで歩いた。街灯が二人を照らし、静かな夜の闇に、二人の影が寄り添うように伸びていた。


「吾郎くん、もう大丈夫だよ」


 美咲は、吾郎の顔を両手で包み込むように掴み、そう言った。吾郎は、美咲の瞳の中に、自分を深く理解してくれる、純粋な愛情を感じ取った。


 吾郎は、美咲を強く抱きしめた。それは、家族との関係で傷ついた吾郎の心を、美咲が優しく包み込んでくれるような、温かい抱擁だった。


「吾郎くん…」


 美咲の声が、吾郎の耳元で聞こえる。その声は、吾郎の理性を完全に吹き飛ばした。吾郎は、美咲の唇に自分の唇を重ねた。それは、結月や姉たちとのキスとは違う、純粋で、しかし情熱的なキスだった。


 互いの息遣い、唇の柔らかさ、熱。吾郎は、美咲のキスに、心が安らぐのを感じた。吾郎は、美咲の肩を抱き寄せ、さらに深くキスを続けた。美咲もまた、吾郎の背中に手を回し、しがみつくようにしてキスを返してきた。


 吾郎の手が、美咲の服に触れる。美咲は、吾郎の手に驚きながらも、吾郎の行為を受け入れた。吾郎は、美咲の服を脱がせ、その白い肌に唇を寄せた。美咲の身体は、吾郎のキスに小さく震えた。


「吾郎くん…怖い…」


 美咲の甘い声が、吾郎の理性を完全に吹き飛ばした。吾郎は、美咲の身体を愛撫し、彼女の快感を高めていく。美咲は、吾郎の愛撫に小さく喘ぎながら、吾郎の身体を求めてきた。


 吾郎は、美咲の身体に自分の身体を深く埋めた。美咲の身体は、吾郎の熱い身体に触れるたび、初めての経験に戸惑い、小さく震えた。しかし、その震えは、快感と歓喜の震えへと変わっていく。


 静かな夜の闇に響く、二人の吐息と、甘い喘ぎ声。それは、吾郎の心を救う、新たな禁忌の愛だった。


 しばらくして、二人は静かに身体を離した。熱を帯びた肌が、ゆっくりと冷えていく。吾郎は、美咲の隣に横たわり、天井を見つめていた。胸には、言いようのない罪悪感と、同時に、深い安堵感が広がっていた。


 美咲は、吾郎の胸に頭を乗せ、静かに身を寄せてきた。彼女の髪からは、シャンプーの甘い香りがした。吾郎は、美咲の髪をそっと撫でた。


「吾郎くん…」


 美咲の声が、耳元で聞こえる。その声は、震えていた。吾郎は、美咲の顔を覗き込んだ。美咲の瞳は、涙で濡れていた。


「どうして、泣いてるんだ…?」


 吾郎がそう尋ねると、美咲は震える声で答えた。


「だって…私、吾郎くんのこと…ずっと好きだったんだもん…」


 その言葉に、吾郎の心は締め付けられた。吾郎は、美咲の想いを、ずっと前から知っていた。だが、自分は、美咲の想いを利用して、自分の孤独を埋めようとしていたのだ。


「ごめん…美咲…」


 吾郎がそう言うと、美咲は吾郎の唇を自分の唇で塞いだ。


「吾郎くん、謝らないで…私、吾郎くんのそばにいたい。それだけでいいの…」


 その言葉は、吾郎の心に深く突き刺さった。美咲は、吾郎の孤独を理解し、吾郎を救ってくれる、唯一の存在だった。吾郎は、美咲を強く抱きしめた。


 吾郎と美咲の関係は、友情という名の壁を突き破り、新たな禁忌の愛へと踏み出した。それは、吾郎の心を救う、希望の光だった。

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