くろんふち =クーロンアパート旅行団=
エトーのねこ(略称:えねこ)
第1話: 欧州一危険な男、震旦大陸に着任す
「ここが九龍要塞(ノイン・ドラッヘン・ブルグ)か、想像よりもデカいな」
「確かに……そうですね。アルジェリアを彷彿とはさせると聞いていましたが、確かに中々」
「しかし、こんな東洋の僻地に左遷とはね……」
「それなんですが、どうやら左遷ではないらしいですよ」
「どういうことだ」
「フューラーに現地に着くまで開けるな、と言われていまして。これ、極秘指令です」
「ほう、開けていいな?」
「はい」
そこに書かれていた文面は以下の通りだった。
偉大なるメンズーアの覇者へ
やあ、オットー。
軽い文面ではあるが、期待はしている。それじゃあ、また今度。
byアドルフ
「ほっほう……」
なるほどなるほど、そういうことか。さすがは吾等の党首様よ。俺の使い方をよく知っていると見える。
「ところで、副官の名前は」
「はい、レーベレヒト・マースと申します」
「……上官相手に偽名使うたぁ、度胸あるな」
「お許しください。本官はクローン人間であり、名前はないんです」
「なっ……!! ……完成していたのか!」
「しっ、声が高うございます」
「……失礼した、それならばマースと呼ばせてもらおう。その様子じゃ、マックス・シュルツとかもいそうだな」
「某を呼びましたか」
「……本当にいたのか。……具体的に聞くぞ、何人いる」
「は、先ほどの隊長の推理通りに答えるとすれば、ここにいるのはフリードリヒ・エッコルトまででございますが」
「……占めて16人か。……なんともやれやれ……退屈だけはしそうにないな」
「それでこそ隊長です」
「それじゃ、行くとしようか。まずは本拠地を決めないとな」
『ははっ』×16(?)
そして、ドイツ第三帝国のスパイ軍団が九龍城のある雀荘に入り込んだのは、後の歴史的影響力に比べて殆ど話題になることはなかった。何せ、東洋の魔窟と称される城塞都市である、いくら西洋人の容姿が東洋人の群れの中で目立つと言っても、九龍城という城塞都市は何もかもを飲み込んで隠してしまう神秘性が存在した。そして、そうこうしているうちに大日本帝国に於いて突如として政治的爆弾が炸裂する事件が発生した……。
「隊長、大変です!」
「どうした、あとここではマスターと呼べ」
「どうやら、大日本帝国で大規模な叛乱騒動があった模様です、詳しくは以下の書類をご覧下さい!」
「んー?」
東京騒乱事件報告書 Georg Thiele - 1936/2/26
大変なことになってしまった。北進論を主体とし、本来ならば我々と共にソビエト連邦を挟撃しうる「皇道派」とされる将校およそ約数十名が大凡千五百人の兵を率いて首都を占拠したらしい。襲撃を受けたのは政府首脳部の岡田啓介首相、鈴木貫太郎氏、斎藤実大臣、高橋是清大臣、渡辺錠太郎氏、牧野伸顕氏などであり、首都機能は麻痺しつつある。幸いにして、事態を把握した大日本帝国皇帝裕仁陛下は自ら軍を率いて鎮圧したようだが、襲撃を受けた人物の安否は不明との由。
正直、我々にとっては誰が死のうがどうでも良い話だと思われるが、問題はこの事件が皇道派と目される派閥の叛乱であり、統制派が力を取り戻す以上、大日本帝国の対ソ参戦は遠ざかったものと思われる。
続報
渡辺錠太郎氏、松尾伝蔵氏の死が確認され、また護衛に付いていた警邏隊二十数名の犠牲が確認された。現在、続々報の執筆のため短文にて失礼する。
(……と、ドイツ語で書いてある(おいっ!))
「……おいおい、大丈夫なのかね、コードーハとかいう連中は」
「エンペラー・ヒロヒトが自ら指揮を執ったという事実は重要でしょうね。これで北進論は消えてしまったかもしれません」
「……一応、政治工作で攻めさせるようにコマンドを組むぞ。失敗しても二の手三の手はあるが、なんとしてでもコードーハには生き残って貰わねば困る」
「ははっ」
「マスター、二番隊からの続報が入ったみたいだよ」
「そうか、で、どんな?」
「はいこれ」
「おう」
続々報
牧野伸顕氏の死亡を確認、彼は皇帝裕仁陛下の信任厚く、退陣の折りに落涙したという逸話を調査の結果発見したため、彼の死が皇帝親征による反乱軍の討伐という現象の引き金になったと思われる。
(……と、ドイツ語で書いてある(だーかーらー……))
「ふーむ。……ちょっと出掛けてくる」
「はっ、してどちらへ?」
「決まってるだろう、こんな報告書貰って、動かん訳にはいかん」
「……畏まりました、何人持って行きますか」
「ヴォルフガング・ツェンカーからエーリッヒ・ケルナーまでだ。後の者は引き続き諜報活動を行っておけ」
『ははっ』×7(?)人
「して、隊長。東京へ向かうのは理解できますが、さすがに今の時期は拙いのでは?」
「そうも行くまい、如何に祖国が偉大といえど、国家の図体を考えたら背後の狼を仕込んでおく必要がある」
「それは、そうでしょうが……」
先行してヤーパンに潜入しているレーベレヒト・マース以下4名の手引きを経て、我々隊長以下6名の特殊部隊はトーキョーで行われたクープを更に引っかき回すことになった。とはいえ、やはり外国人はこの国では目立つのか、潜入捜査にも支障を来す程だった。とはいえ、隊長によると「お前らが囮になってくれる分、やりやすいぞ」と仰っていたが……。
トーキョーでのクープは、エンペラー・ヒロヒトが介入した結果、その日のうちに終了した。ゲオルクの報告書によると重要人物が三名ほど死亡したようだが、幸いにして現職の閣僚には影響はなく、引退したご老人の死であることを考えたらこれは契機かもしれない。だが、事態はそんなことで終わるはずがなかったんだ……。
「おい、ハンス」
「どうした、ベルント」
「どうしたじゃないよ、こんなに厳重な体制で隊長は大丈夫か?」
「それなら心配すんな、俺達が囮になることで、隊長の時間が稼げるんだ」
「そりゃ、そうなんだけどさ……」
「おい」
「あ、隊長」
「帰るぞ」
「えっ、でも……」
「任務は中止だ、それどころじゃない事態が起きた」
「「えっ」」
……祖国が、ラインラントに進駐することは知ってたけど、どうやらヘマをしたらしい。急ぎ帰還命令が出て、隊長とブレーメン隊、ハンブルグ隊が帰還、僕らキール隊2部隊は隊長の留守の間、ノイン・ドラッヘン・ブルグのアジトを警備することになった。……そして、隊長が選んだアジトの民間カジノでちょっとした事件が起きたんだ……。
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