第七話 空の友達
(今日は色々あったな…。結局ミューは見つからないし…)
そんな事を思いながら家に帰ると、見知らぬ靴が綺麗に並んでいた。
(ローファーだ。誰か来てるのかな…)
予想は的中したようで、リビングには空と同じ制服を着た女子がいた。
「あ!!早坂…よね??アタシ神崎未咲って言うの!よろしく!」
黒髪でクルクルのツインテールに耳にはイヤリング。目はツリ目でまつ毛が長い。
(陽キャの周りには陽キャが集まるのか…)
「……よろしく」
空が俺の話でもしたのだろうか。戸惑いながらも俺は返事をする。
「え、待って、めっちゃビジュ良くない?!写真よりも数倍かっこいいわ!どうしよう日野宮!」
「どうしようって…会いたいって言ったの未咲ちゃんでしょー」
「そ、そうだけど!!あーもっと髪巻いてくれば良かったわ!」
未咲は手をジタバタさせていた。
「大丈夫。翼はそういうの全く気にしないタイプだから」
空はお菓子の箱を開けながら言った。
「アタシが気にするのよ!!」
未咲、と名乗る女子はその場で地団駄を踏んだ。
なかなか動きがうるさい。
「ね!写真っ!撮ってもいいかしら!?」
「えっ…と、なんで?」
いきなり詰められる距離感にたじろぎながら俺は聞いた。
「女の子は誰しもイケメンと写真を撮りたいもんなんだよ、翼」
空はにやっとしてこちらに指で長方形を作った。
「あ!アタシ学級委員だし、彼氏いないからなんか変なこと言われることは無いわよ!そこは安心してちょうだい!!」
未咲は胸に手を当てて誇らしげにこちらを見つめる。
(押しも強いし自信もでかいな…この子)
断れるはずもなく、俺は無難にピースした写真を未咲に撮らせた。
「お礼を言うわ!ありがとう!日野宮も!じゃあそろそろ家に帰るから!またね!!」
「またねー」
空は未咲が持ってきたお菓子を頬張りながら手を振って玄関まで見送っていた。
「…なかなか忙しないやつだな」
「意外と、ウラがありそうな子だよね!あーいう子嫌いじゃないな…強そうだし!」
お菓子が美味しかったのか空は笑顔で答えた。
「何の裏があるんだよ…」
(確かにメンタルは強そうな奴だったけど)
人間関係は苦手だ。そんな感情的な事を探るよりも法則性のある事象を探ったほうがどう考えても楽しい。
つまり未咲に裏があろうとなかろうとどうでもいい。
「あ、ジローのご飯作らなきゃ!」
空はクルッと振り返りゲージの中にいたジローをめちゃくちゃに撫でた。
ジローは茶色い柴犬で、今年で七歳らしい。空や明さんには懐いているが、俺には全く懐かない。
理由は不明だ。
「わんっ!」
「おー!飯欲しいかジロー!今作るからね!」
空はドッグフードの入った袋をガラガラと揺らし、ジロー用のボウルにゆっくりとひっくり返す。
カラカラカラッ!ガラガラガラッ!
ドッグフードの粒が金属製のボウルに跳ね返り、音を反射させる。
ジローは分かりやすく尻尾を振っていた。
(…風呂でも入るか)
俺はようやく戻ってきた日常に肩を抜きながら自分の部屋にスクールバッグを置きに行った。
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