Episode 8 :【母に捧げる約束(ちかい)】
《――「久しぶりだな、
できるなら、こんな形で再会はしたくなかったが……」》
《――「……あなた、は……?」
《――「お前の両親と、親しくしていた者だ。
《――「……斎賀、先生……あなたが……」》
斎賀先生が、俺の前に現れたのは、母さんが亡くなってから、一週間ほど立った朝だった。
両親から託された約束を果たすために、俺のところに来てくれたのだろう。
《――「……本当に、すまなかった。もう少し早く、私が来てさえいれば……。
これからは、私がお前の家族だ。共に、亡き両親の分まで、生きていこう」》
その時の斎賀先生は、絶望に打ちひしがれている俺を
……先生自身だって、誰よりも辛く、悲しい思いをしていたはずなのに。
しかし、すでにあの時、俺を突き動かしていたのは、『世界を変えるために強くなる』という決意だけだった。
そんな俺の眼差しを見て、斎賀先生は、一瞬だけ驚いたが……すぐに真剣な顔つきに代わり、手を差し伸べてきた。
《――「お前には、両親の命を背負う、覚悟があるか」》
何も迷いはなかった。
そこに言葉は必要なく、斎賀先生の手を、握り返すだけだった。
それだけでも、斎賀先生に俺の決意を示すには、十分なものだったのだ。
《――「……母さん。ボク――俺、必ず、やり遂げてみせる。
もう誰にも、母さんのような思いを、させたくない。
だから俺が、この世界を、変えてみせる。
……こんな形でしか見送れなかった、親不孝な息子で……ごめんね》」
斎賀先生の元で生きる決意をした、その日。
俺は、
失意の中にいた俺は、きちんと母さんを埋葬させてあげられなかった。
斎賀先生が来るまで、俺はただ、死んだ母さんの手を握り続けることしか、できなかった。
その結果……あんなにも美しかった母さんに、辛い思いをさせてしまっていた。
だけど、もう俺は迷わない。
母さんの想いを背負って、生きていく。
あの時、風と共に消えていった、母さんの
《――「過酷な現実を乗り越えられぬ者に、世界を変える資格などない。
私がお前に与えるのは、
お前の覚悟を問う――儀式だ》」
《――「……儀式……?」》
《――「儀式には、
終えた時、お前は必ず、何かを失うだろう。
それは平和か、心か、命そのものか……。
それほどの覚悟がなければ、地獄を変える英雄になど、なれはしない」》
《――「……覚悟は、できています」》
――こうして俺は、斎賀先生が創設した地下シェルターに移住し、そこのトレーニングルームで、鍛錬を繰り返す日々を送っていた。
戦士になるということは、通信簿に評価を付けられるのとは、わけが違う。
訓練の内容がハードなだけでなく、精神面も、徹底的に打ちのめされるからだ。
特に心が砕けそうになったのは、特殊な仮想現実体験装置を使った、限りなくリアルに近いイメージトレーニングだ。
ある時は、目の前で父さんが、怪物に喰い殺される光景。
飛び散った血肉が衣服に染み込み、吐き気を
またある時は、世界に絶望し、生きる気力を
糸が切れた人形のように
俺に襲いかかってきたのは、まるで脳味噌と心臓を、凍てついた氷の手で握り潰してくるような、耐え難い苦痛。
しかし、
いっそのこと死んでしまいたくなるような苦痛と、両親を救えなかった後悔。
そして俺だけが生き延びてしまった罪悪感に、圧し潰される日々……。
そんな地獄の日々を、俺は何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も、繰り返し続けた。
『地に
たったそれだけの、吹けば消えてしまいそうな決意だけを命綱に、俺は生きてきた。
――そうして俺は、ついに、永遠のように続くとさえ思えた、過酷な訓練の日々を、乗り越えることができた。
そのおかげで、猛獣のように
……もう少しだ。
あともう少しで、母さんを救えなかった無様な自分に終わりを告げ、新たな旅立ちを迎えられる。
夢を叶える第一歩を、踏み出せる。
この先に何が待ち受けていようと、俺は逃げないし、怯まない。
両親の弔いのため、何より自分自身の未来のために、俺は必ず、成し遂げてみせる。
必ず、この世界を変えてみせる……!!
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《次回予告》
《それはつまり――ついに〝運命の日〟が訪れたことを意味していた。》
《なぜなら今日は、俺にとって、望みを叶えるために地獄から
「……行くのか?」
次回――Episode 9 :【背中越しの別れ】
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