第8話 エイジング
マサヤ様へのクリスマスプレゼントの事を“お姉様”に相談したら
「大人の男の人なら本革のコインケースなんてどうかしら?見た目は小さいから“負担”にならないし、いつも身に着けてもらえるわよ」ってアドバイスをいただいて一緒に見に行ってくれる事になった。
やっぱりお姉様は凄い!
で、今、お店に居るのだけど、私は鮮やかなターコイズ色の国内レザーの三角形のコインケースにずっきゅん来た!!
「これ、いいと思う!」とお姉様にお見せしたら
「そうねえ~千景ちゃんが持つなら可愛いわね」とのお返事。
「ん~そうかあ……じゃあ、
「同じ緑系ならこのエバーグリーンはどうかしら?まず手触りを確かめてみて!」
「わあ!しっとりと滑らか!」
「でしょ?! これはイタリアンレザーなの! イタリアンレザーは
「ハイ!」
「良かった」と微笑むお姉様の笑顔が少し寂しげだったので「どうかなさいましたか?」と尋ねると
「うん、ウチのバカ弟がこういうのを持てる日が来るのかなあって……」とおっしゃるので
「まるでお母様みたいなセリフですね」って申し上げたら「アハハハ!」とお笑いになった。
◇◇◇◇◇◇
そんなこんなでコンサートの当日を迎えた私は……赤に緑のクリスマスラッピングが施されたプレゼントを胸に抱いて、雪の舞う中、会場へと向かった。
コンサートは大変な熱気で、降り積む雪を溶かしちゃうんじゃないかと思ったけど、外に出てみたらホールの屋根にもしっかり雪が積もっていた。
で、お友達の瀬川さんと一緒にマサヤ様の“デマチ”をしていたのだけど……どうやら外されてしまったらしい。
凍えてしまった体を温めようと瀬川さんとマックに入ったのだけど……マサヤ様のコンサート談義を皮切りに熱い腐女子会となった。
私がリヴァイ様の素晴らしさを息も継がずプレゼンしていると瀬川さんがそれを押し留めた。
「ちょっと待って!千景ちゃんのスマホ、鳴ってない?」
「えっ?!」とスマホを取り出すと“クソ弟”からだ!
無視したかったのだけどしつこく掛けて来そうだったので不機嫌を思いっ切り声に乗せて電話を取った。
「何?!」
『良かった!無事?!』
「はあぁ~?!!」
『もうコンサートは終ってるんだよね』
「だから何よ?!」
「今、雪で電車止まってるから大丈夫かな?って」
私はスマホを伏せて小声で瀬川さんに状況を伝えると瀬川さんはすぐにスマホの交通情報を立ち上げて見せてくれた。
「そうみたいだね。でも和田くんが心配する必要はないよ。私、今、恋人と一緒だから邪魔しないで!」
『エエエエエッ!!!』
絶叫がスマホから鳴り響いて私は耳がキンキンするし、瀬川さんは肩を竦めた。
『ひょっとしてマサヤ様??!!』
「そんなわけないじゃん!私の“リア充”を邪魔しないで!!」
『悪かった……』物凄いしょんぼり声で電話は切れた。
「カレ、いいの?」と瀬川さんは心配そうだ。
「いいんです!たかだかクラス委員だけの付き合いなんだからプライベートにまで口を挟まれちゃ堪んない!」
「そっか、カレシでもないのに心配してくれたわけね」
「大きなお世話ですよ!だいたいアイツ!今日はクラスメイトとデートの筈なんですよ!」
「……それはいけないなあ~」
「でしょ?! これはセクハラを案件にもなり得ます!」
で、話題は『セクハラ』や『リア充』へと流れて行ったのだが……
私はこんな弟を持つ美珠帆姉様が少し気の毒に思えたのだった。
第9話へ続く
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