第24話 科学は神を否定出来ない


 新たに現れた2人の人影は、ヤトと同じ様に頭に角が生えて居た

 良く見れば、尻尾まで生えている


「夜刀、力を使ったね …… 」

 身長180cmを超える大柄な人影がヤトを見下ろし、威圧的な態度で迫る


「あれほど大神おおみかみ様から注意されてたのに …… !」

 150cmに少し届かなさそうな小柄な少女がヤトを嗜める

 140cm程度のヤトが更に小さくなって見える


「私の信徒を護る為に仕方無かった …… 」


「はあっ?信徒?アンタに?」

 2人共、ヤトと同じ様に褐色肌 …… と言うより大柄な女性は、どちらかと言うと真っ黒だ

 豊かな胸が、これでもかと女性である事を主張していた


「ヤト、大丈夫?そちらの方々は …… ?」

 諏訪子が心配して声を掛けると、小柄な少女が諏訪子を睨む


「人間如きが口出しするな!」

 パリッ!と少女の周りに電光が奔る

「止めて!雷禅ライゼン姉さん!」


 ライゼン …… ?

 もしかすると「雷神」様だろうか


「雷禅、止めなさい人間が怯えている」

「はぁぃ、お母様」


 と言う事は、大柄な女性はヤトとライゼンの母親なのだろうか?


「私はこの2人の母、世龍乱セレロン、此度は娘が迷惑を掛けたな、貴様が夜刀の信徒か?」


 信徒 …… ?私が?

 え、いつの間に?

「諏訪子は私の言葉を信じてくれた只1人の人間 … それに貢ぎ物も …… 」


 ああっ!そう言う事か

 え、何?

 貢ぎ物ってオニギリの事?

 神様への供物にしては、ショボく無いかしら?


「オニギリが供物に為るなら、レーションのカレーはどうなんすかね?」

 佐伯二曹が小さな声でコソッと呟く


「カレーも美味しかった、アレで私に刃を向けた事は帳消しにしてあげる」


 もし、お気に召さなかったら、どう為っていたんだろう?

 ヤトが食いしん坊の神様で良かった


 て言うか、お母さんセレロンの姿は何だか陽炎の様に揺らめいて見えるのは何だろう


「ああ、私の身体は太陽より超質量だから、重力場の影響で光も屈折して見えるのだ」

 どうやらお母さんも物理学の法則を超越してるらしい


 一生懸命に何やらメモってた日下部先生が一歩踏み出す

「あのー」

 ピシャアンッッ!!


 突然、先生の足元に雷が落ちた


「下がれっ、下郎!」

 ライゼンの髪の毛が逆立ち、身体中に電光がスパークしてるのが見える


「身の程を弁えるわきまえる事すら知らぬ下賤の者共め、我がいかずちで消し炭にしてくれる!」


「待ちなさい雷禅、天照アマテラス様の御言葉を伝えねば為りません」

「ちぇっ、はいはい」

「はい、は1回」

「はぁい」


 雷神様もお母さんには頭が上がらないらしい

「でも私の可愛い夜刀に手を出した痴れ者は許せない!」

 雷神様がツリ目でギロリと此方を睨みつける


 佐伯二曹はコソコソと諏訪子の後ろに隠れようとするが、いかんせん190cmを超える巨漢が身を隠すには諏訪子は小さ過ぎる


「佐伯さん、レーションまだ持ってる?」

「あ?ああ、そうか!」

 佐伯は背嚢からコンバットレーション携行戦闘糧食のポウチを取り出すと、恐る恐る差し出した


「詰まらない物ですが …… お納め下さいっ!?」

「ふんっ!分かってるじゃない」


 雷神様がカレーのポウチをひったくる

 当面の危機は回避されたらしい


「佐伯、お前カレーばかり持ってるな、わざわざPXで仕入れてるだろ」

「何言ってんすか、カレーは栄養バランスに優れた完全食なんすよ!」

 間違ってはいないが、普通の隊員はカレーばかりだと飽きる


 自衛隊の携行戦闘糧食は以前は長期保存が効き食器の要らない缶メシだったが、今では水さえ有れば温かい食事が食べられるレトルトに切り替わった

 勿論、冷めたままでも食べられる


 1食当たり1,000kcal摂れる様に計算されているので、結構大盛りだ

 火を使わない為に煙で敵に発見されるリスクも少ない


「カレーは神の食べ物 …… ごはんに合う」

 好みは人それぞれだと思うけど、大丈夫かしら?

 

 

 

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