19話
色々あった6月が終わった。
VTuberとして正式に器を用意することになったけど、扱いとしては今までの通り緋影レンのチャンネルに登場するゲストというかサブメンバーみたいな存在で、バイトとかでもなく家族のお手伝いみたいな感じにするんだって。いきなり姉妹チャンネルに路線変更すると今までのファンが戸惑うだろうし、労働扱いになると税金やら保険やら法律やらなんやらでコストが嵩むらしい。まぁそのへんは大人におまかせである。おこづかいに色がつくので、私としては言うことはない。
ただ、にこぷれとして公式に存在を認め、ホームページでもレンの個別ページに「妹ちゃん」として乗っけてもらうことになった。
あとはお披露目配信をやることになった。大袈裟なんじゃないかと思ったけど、周知するのが目的だし、なんなら企業Vとしてはちょっと異例のこの件でバズを狙えたら、みたいな目論見もあるそうで。
歌ってみた動画も合わせて出す…というか動画の公開タイミングに合わせてお披露目をして、スタートダッシュでのインパクトを狙うらしい。
こういうのがポンポンと決まっていく会議を見てると大人ってすげーって思う。
あ、Vとしての名前は「緋影アイ」にした。
実名は身バレしないか、っていう声もあったけど、気づく人がいてもまさか実名で活動するとは1周回って逆に思わないんじゃないだろうか。木を隠すなら森の中とも言うし。あと姉がレンだから姉妹合わせてレンアイ→恋愛、と覚えてもらいやすいだろうしね。なんかお姉はそれを聞いて微妙な顔してたけどなんでだろうね。
リアルでは球技大会と期末テストがあった。
期末はまぁ、いつも通り。色々あった中でも順位はキープはしたんだから褒めて欲しい。
球技大会? ちみっ子に活躍の場面なぞなかったと言っておこう。なんで種目がバスケとバレーなんだよ。
★
7月になったらもう後は大した行事もなく、夏休みを待つだけなので、校内の雰囲気もいささかダラけ気味。
何よりあっついしね。6月の時点でもかなり暑かったけど、7月は輪をかけて暑い。今から8月が怖いよ。
とりあえず通学にも日傘必須だ。禁止のとこもあるらしいけど、うちは理解のある学校で助かる。
髪は基本軽く巻いてお下げにして首元を出してるんだけど、高確率でしーちゃんにゆるい三つ編みにされる。彼女はなんか私の髪いじるの好きなんだよな。
たまにその光景を見て拝んでくる男子とか女子とかいるけど、なんなんだあれは。
今日もお昼休みに髪を編み編みされている。
しーちゃんは何故こんなにもニッコニコなんだろうか?
「夏休み、どうしよっか」
「…夏期講習?」
「枯れすぎ! せっかくなんだから遊ぼうよ、思い出作ろうよ、青春しようよ」
お、おう…軽く答えたら凄い勢いで反撃された。
まぁでも、そうか。来年の今頃はもっと大変だろうし、今年ぐらいは遊んでもいいかな。
「遊ぶのはいいけど、先に宿題さっさと終わらせちゃおうね」
「が、がんばりマス…」
いや、さっさと終わらせたほうが心置きなく遊べない?
とりあえず水着買いに行こうぜって流れになった。
あ、そういえば今日はにこぷれゲーマーズの日だったな。
★
「今週のにこぷれゲーマーズはこちら、最近弊社界隈で話題のエピックです! というわけでゲストどうぞ!」
「みんな〜こんばんは〜。2期生の花村りので〜す」
「この方もいます。どうぞ〜」
「レンいもで〜す」
『ゆるいゆるい』
『ゆるふわーゆるふわー』
『ゆるふわって久々に聞いた』
『FPS回とは思えない緩さ』
『レンいもてw』
花村りのさん。天然ゆるふわお姉さんがコンセプトの2期生。ライトブラウンの大人ガーリーなゆるいウェーブヘアに、アイボリーのワンピースとブラウンのニットのセットアップ。公式ではOL風の衣装だったので、この人もお着替えかな。目がややタレ気味で、いかにもゆるふわなお姉さんってかんじ。
この人も癒やしオーラが凄いな。紫上さんが純粋に声で寝かせてくるタイプなら、この人は溢れ出る包容力で包みこんで寝かしつけてくるみたいな感じ。
あと、何がとは言わないけどデカい。多分にこぷれで1番デカい。
『今回も講師枠は妹ちゃんなのね』
『FPS経験者?』
『妹ちゃんならなんでもやれそう』
『マスター級とか言われても驚かん』
「さすがにマスターではないです〜」
「ゆるいゆるい。戻して戻して」
「あ、お姉〜、あれ出して〜」
「わかったから戻しなさい」
なんというかこう、決して押しが強い人ではないんだけど、いつのまにかペースに巻き込まれるタイプだな…。
YooTubeの配信画面にぽこん、と絵が表示される。画面の右に紫上さんと花村さん、左にレンがいるので、レンの隣だね。このへんの操作権は私にはないのだ。
『お?』
『SDキャラ?』
『ひょっとして妹ちゃん?』
『かわええな』
『手書き感パねぇけどかわいい』
そう、SDキャラのアイを描いて出してみた。ちゃんとしたやつはお披露目で使うので(絶賛ブラッシュアップ中)それまでの繋ぎとしてね。
ミディアムウルフの黒髪に赤のメッシュ、全体的にレンを幼くした雰囲気。
「立ち絵ないのが不評ぽいので用意しました」
『嬉しいけどアンチの言うことなら気にしなくてええやで』
『まぁ妄想捗るから助かるラ◯カル』
『マダガスカル』
『資料提供ありがとやで』
「えっと、エピックはシーズン3と4の頃にプラチナ1までやりました。それ以降はやってないです」
『やるやん』
『中々じゃない(腕組み』
『どんぐらい凄いんや有識者』
『全体の20%より上ぐらい』
『でも初期でやめたんやな』
『まぁ初期はね…』
『バグとチーターまみれやったしな』
『民度もアレだったからな』
そこもあるけど、やらなくなった理由は違うんだけどね。まぁいいか。
『待て待て、おかしいってw』
『? 何が?』
『あ…』
『エピックのサービス開始って6年前で、シーズン3始まったのがその約8ヶ月後やぞ』
『え、妹ちゃんたしか17だよな…?』
『小学生でプラチナ1まであがった…って、こと?』
「そうですね。でもプレイヤースキルも今ほど仕上がってる人多くなかったし、今とは比べられないと思います」
『わい3年やっててゴールドから抜け出せないんだけど…』
『俺その年頃パケモンしかやってなかったわ』
『なんか凄いことはわかった』
『最近の若者こえー…』
エピックは基本無料でかなり遊べたからありがたかったんだよね。小学生だとぽんぽん新作ゲーム買えないし。
「というわけでね、我々初心者ズに教えるのに専門の方をお呼びするのもしのびないということで、妹に教えてもらうことにしました!」
「先生~、よろしくお願いします~」
「お願いします~、わたくし、えいむにはちょっと自信があるのですよ~」
「任されました~、あと紫上さんそれフラグです~」
『ゆるふわ~ゆるふわ~』
『これ寝かしつけ配信だった?』
『スヤァ…』
『ワイらが寝落ちする前に始めて…』
「はいはい、戻して戻して」
な、なんか気づくとペース持ってかれるな。
さて、教えると言ってもエピックは全世界で遊ばれてるゲームだけあってマニュアルも仕上がってるし、特別教えられることってないんだよね。
基本操作と知識をしっかり覚えてもらったほうがいいかな。リスナーさんにも詳しい人いるだろうしね。
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