10話
「んーハズレ。ガード崩しとかジャンプ攻撃強化とかいらなす」
「詠唱+2出たけど使う?」
「ちょうだい」
「りょ」
ギャル山さんと通話しながらナイトメアナイトをしてる。
発売日からやってて、プレイ時間も150時間とかいってるからちょっと飽き気味なんだけどね。高難度といっても慣れればボケっとやってても攻略できるし、アクションRPGはシンプルに楽しいのでダラダラ続けてる。まぁメーカーは最低1年はアップデートを続けるって公言してるし、オンラインも盛況なようだからまだまだ遊ぶんだろうな。今も最近実装されたデュオモードでやってるけど、3人より敵のHPが減ってるからサクサク進められて、これはこれで楽しい。
味変ってことで普段前衛専の私がキャス、後衛専のギャル山さんがバーサーカー。バーサーカーは高いHPと殴って回復するリゲインスキル、特大武器の強力な攻撃力でガンガン攻める脳筋アタッカーだ。その分搦手は全く使えないけど、シンプルでわかりやすい強さで人気ジョブのひとつ。
「ポーション回収したら大拠点いこか」
「りょー」
拠点に移動開始。移動の時間はちょっとだけヒマだ。このタイミングでルートのプランニングとかアイテムの準備とかやってねっていう意図なんだろうけど、ルート構築も慣れるとながらでやれてしまうので、どうしても走ってる間はヒマに感じられる。
「そいや今日はお姉さん配信やってないの?」
「んー今日はマルカやってるぽいよ」
マルコカート。誰もが知ってて恐らく世界で一番売れてるであろうレースゲーム。シンプルなルールと運要素による一発逆転要素なんかが人気で子どもも大人も楽しめる神ゲー。任天道さんのゲーム造りのバランス感覚ってほんと神がかってると思う。
当然私もそれなりにプレイしてはいるんだけども。
「あーちゃん出ないの?」
「血と鉄がないゲームはちょっと」
「あーちゃんらしいわ」
けらけらとギャル山さんが笑う。駄弁ってる間にも障害物を越えたり邪魔な雑魚敵を処理してるあたり二人とも慣れすぎである。
別にファミリーゲームもやらないわけじゃないけど、やっぱりプラムソフトさんのゲームが肌に合うんだよね。雰囲気とか世界観とか難易度とかね。
「あーちゃんならマルカでも撮れ高作れそうだけどね」
「私の撮れ高って精々1~2回だと思うよ」
「そうなん?」
配信に出るようになってちょこちょこ調べたんだけど、上手いプレイって最初は凄さとか物珍しさとかで注目されるんだけど、飽きるんだよね。刺激に慣れるというか。注目されるライバーってゲームスキルがどうこうより、本人の人としての魅力が高い人がやっぱり多い。
結局、配信という形態やVTuberという姿であっても、好きになってもらえるのって「人」なんだと思う。それに人が人を好きになる理由はリアルもバーチャルもあんまり変わらないんじゃないかな。
みたいなことを駄弁りながらボスを処理。
「VTuberっていっても特別なわけじゃないのね。あたりまえか」
「んだね。リゲイン強化出たからどぞ」
「せんきゅ。そいえばガワの絵とかライブ2D?とか用意するのっていくらかかるんだろ」
「大体20万とか聞いたけど」
「にじゅ…っ!?」
凄い金額だよねー。少し前の大卒の初任給と同じぐらいか。普通の高校生の身分じゃ絶対にお目にかかれない。
あと配信に使う機材(パソコンとかマイクとかカメラとか)も用意する必要があるし、活動中もなんやかんやでお金がかかるらしい。お金はそれなりに入ってくるけど出ていくお金も多い、って獅子森さんが言ってた。
獅子森さんはちょいちょいRINEで会話したり通話したりている。ほとんど雑談だけどたまに配信業界の裏話とか教えてくれたりもする。初対面以来なんか気に入られたっぽい。
「そんなにかかるのかあ。じゃああーちゃんが個人でやるのも難しいか」
「凄い押すじゃん、気に入ったの? V」
「いやーVはまぁ普通だけど、あーちゃんが世に埋もれてるのは勿体ないなって」
「なにそれ」
私は別に特別な価値とかない普通の人だと思うけどなあ。
「あーちゃんが普通とかないない」
「えー…」
「あと今いるVだって元々は普通の人なんでしょ?」
それはまぁ、そう。お姉も元々はエンジニアだし。大手事務所とかはある程度芸能キャリアがある人を採用してるとか聞いたことあるけど、中規模以下の企業や個人でやってる人の大半は特別なキャリアとかない普通の人らしい。
「まぁでも、Vになってやりたいこととかないからなあ」
「ゲームで有名になるとかは?」
「私はそんな人を引き付けるプレイとかは出来ないと思うよ」
「じゃあ歌とか。あーちゃん上手じゃん」
「歌うま勢なんていくらでもいるでしょ」
歌は需要が多い分、なり手志望も物凄い多いとかなんとか。まぁ芸能の二次展開で真っ先に思いつくのって歌だよね。リアルの芸能人とか、アニメやゲーム、声優さんなんかも歌はちょくちょく出してるし。
「私はそもそも人を楽しませようって意識が薄いんだろうね」
小粋なトークとか出来ないし、コメントも追うのが精一杯でプロレスとか出来る気がしないしな。
エンタメ向けの性格ではないんだろうな。
「配信が楽しい、だけで理由は十分だと思うけどね」
「押すなあ」
ギャル山さんはどうも私に対する評価が不相応に高い気がする。当人曰く自分を変えるきっかけになった人だから、ってことなんだろうけど。
私なんて色々足らないところだらけだと思うんだけどね。
「まぁ強制する気はないけど、もしやるなら応援するよ」
「ありがと。そん時はともちゃんがファン1号だね」
中学の頃のあだ名で呼ぶと、ギャル山さんは照れくさそうに笑った。
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