聖剣の奉納(押しつける)
シンは老婆に国ノ王の剣を差し出した。
「お祓いしていただきたくて参りました」
「どちらから来られました」
「塔の街です」
「大変でしたわね」
街道では強盗に襲われるし、勘違いで馬飼いに捕まえられるしで大変でした。
「旅は順調でした」
シンは答えた。
院長はそうではないと答えた。
白亜の塔のことだと。
「あ、ああ……」
レイが隅で何か見つけた。五枚組に犬の顔が見えた。白とも銀ともいえる毛並みの犬のようなものが描かれていた。牙を剥いていた。レイの頭を二つくらい食らいそうだ。
「これは聖女ヒルダル様を庇護していると言われている領主様の部下の聖獣ですね。ヒルダル様を邪悪な精霊から守るためにあるのが、我々聖女教会なのです」
「聖獣は頭だけなんですね」
「伝え聞くところによると、この絵は本当は六枚あるのですが、わたしが赴任したときには五枚しかありませんでした。犬は五枚目と六枚目に描かれていますね」
「剣を預ければお祓いしてくれるのか」
レイが尋ねた。
「
「今の院長はお祓いの力があると聞いている」
「どなたから聞いたのですか」
シンは三人と塔の街から街道沿いで会い、教会で待ち合わせすることになっていることを話した。院長に何か頼まれませんでしたかと尋ねられたので、シンはレイと顔を見合わせた。
「強い人を探していた」
レイが背中に担いでいた剣を外した。
「お祓いできるのか」
「これはこちらと同じものですか。何だかお互いに強い気が漏れていますね」
院長は難しい顔をした。剣の凄さを察したらしく、決して触れようとはしない。二振りをどうしていいものかと呟いた。
「簡単なお祓いはできます。でもこれくらいのものになると、本部へ問い合わせないと。判断できるまで御本人でお持ちください」
院長は穏やかながらも力強く拒否の姿勢を示した。慈しみ深い様子ではあるが、災いは遠ざけたいという気持ちも透けて見えた。レイは焦る院長に聖なる地はどこにあるのかと尋ねた。
「日が沈むところです。湖の向こうは日が昇るところですから、教会の裏手になりますね」
「教会の裏へ置いとくか」
レイ、意味が違うと思うぞ。
近くにあれば、ここが聖地になる。
「いくつもの苦難があるのですよ。ですからわたしたちは聖女様に祈るのです。いつか聖女様の下にお仕えできるように。苦難を乗り越えさせてくれるように」
「祈れば救われるの?わたしなんて村で幸せになりたいと祈ってたけど何もなかった」
「この世界の秩序を司ると恐れられた白亜の塔も滅びました。この世のものとは思えないほど醜い半身半獣を見たとか。死者の恨みを聞いた者もいるようですね。生きる者と死んだ者の隔ては案外と低いのかもしれません。いつの日かわたしたちは聖女様の館でお仕えするのです」
「奴隷か」とレイ。
院長は冷静になるために深呼吸をした。
「お二人は、まだ聖女様を理解する必要がありますね。三日後の朝の十時に勉強会がございます。ぜひお越しになられてはどうですか」
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