「ブラック企業辞めたら、女神にスカウトされて異世界で無双してた件」
ブロッコリー
第1話
【第1話】
会社を辞めたら、女神が玄関にいた。
気づけば、俺は会社のデスクで突っ伏していた。
「ん……?」
視界がぼやける。外は真っ暗。時計を見ると、深夜2時35分。
……やっべ。終電、逃した。
「はー、またかよ……」
出社してから何時間経った? たぶん14時間以上働いてる。
これで、今月の休日はゼロ更新だ。
課長の怒号、部長の圧、無茶な納期、理不尽なクレーム――そんな地獄みたいな毎日。
さすがにもう、限界だった。
俺はタイムカードも切らずに会社を出て、無言で歩き出す。
夜の街は静かで、どこか遠くの世界みたいだった。
ようやくアパートの前にたどり着いたのは、3時すぎ。
「……何も考えたくない……」
スーツのまま玄関を開け、ベッドに倒れ込む。
目を閉じた瞬間――
ピンポーン。
チャイムの音が鳴った。思わず起き上がる。
「は? こんな時間に……?」
恐る恐るドアを開けると、そこにいたのは――
金色の髪を腰まで伸ばし、白く輝くドレスをまとった美少女。
しかも背中からは、まるで天使のような羽が生えていた。
まばゆい光に包まれて、彼女は言った。
「初めまして、佐藤カイ様。あなたを、異世界にスカウトしに参りました!」
「は?」
「私は異世界アルティアの女神・リアノ=ルミナス。あなたの魂は、我が世界に“希望”をもたらす存在です!」
眠気で頭がおかしくなったのかと思った。
でも、その瞬間、脳裏によみがえるのは――
課長の罵声。
倒れた先輩。
誰も信じられなくなった社内。
そして何より、自分がもう限界だということ。
……だから、俺は言った。
「異世界って……ブラックじゃないですか?」
「いえ! のんびりスローライフも可能です。
温泉あります。ご飯うまいです。仕事はしなくてOKです。
さらに、異世界生活に便利な“スキル”を3つ選べます!」
「スキル3つ!?」
「はい! 筋力100倍、時間停止、料理スキル、瞬間移動……いろいろありますよ!」
「行きます」
考える間もなく、俺は即答した。
こうして――
ブラック企業を辞めたその夜、俺は女神とともに異世界へ旅立った。
のんびりスローライフを送るはずだったんだけどな。
……まさか最初の村でいきなり魔物に襲われるとは思ってなかったけど。
(つづく)
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✨次回予告(第2話)
「異世界なのに、労働させられてる件について」
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