第25話


第25話「文化祭当日、恋文の嵐!」


──文化祭当日・朝──


校門から校舎を抜けると、あちこちに飾り付けが施され、生徒の熱気が溢れていた。俺と夏希、瑞希は、まだ人通りの少ない屋上へ向かう。


「準備、最終チェックね」


夏希は投函箱の角度を微調整し、瑞希は即興劇用の台本をポケットにしまう。俺は返事カードを封筒に丁寧に詰めていく。


「よし、完璧だ!」


三人で拳を合わせ、夏希が声を張った。


「恋文コーナー、開幕しまーす!」



──午前中──


最初の来場者は、緊張した文化祭実行委員のカップル。投函箱に封筒を入れると、瑞希がステージ脇でナレーションをスタンバイ。


「それでは、いただいた恋文を即興劇で再現します!」


瑞希の合図で、俺が男性役、夏希が女性役に。二人の緊張した告白が、小さな屋上劇場にドラマを生み出す。来場者の拍手と笑い声が響き、コーナーは大成功の滑り出しだった。



──昼休み──


続々と恋文が集まり、箱はあっという間にいっぱいに。俺は返事屋として、合間合間に小さなカードを書き続ける。


「“君の言葉で、私の一日が輝きます”なんて、いいね」


夏希がカードを手にとって見せる。


「瑞希さんの即興も絶好調!」


瑞希は汗をぬぐいながら微笑み、集まった観客に深々とお辞儀した。



──午後──


突然、雨粒がパラパラと屋上に落ちてきた。


「えっ、雨?」


集まっていた生徒たちがざわつく中、俺はとっさにテーブルライトの傘を高く掲げた。


「大丈夫! 雨ニモマケズ、続行!」


夏希と瑞希も俺の後ろで笑い、来場者を誘導してテント下に移動。狭いスペースだが、三人で息を合わせて進行を続ける。



──夕方──


雨はすぐに上がり、夕陽が再び照らし出す。最後の客となったのは、なんと顧問の先生と生徒会長ペア。緊張気味に恋文を差し出す姿に、瑞希は静かに頷いた。


「最後の劇、頑張ります!」


三人は肩を寄せ合い、即興劇のラストシーンへ。恋文の「ずっと隣で笑っていたい」という言葉を、瑞希のナレーションが包み込んだ。終わると、生徒会長から大きな拍手が送られる。



──片付け後──


屋上にはもう人影がほとんどない。三人とも、やりきった満足感に浸っていた。


「すごかったね……」


夏希が箱を片づけつつ呟く。


「恋文、200通以上集まったみたい」


俺は驚いて空を見上げる。


「みんな、自分の想いを伝えたかったんだな」


瑞希がポケットから一通、手紙を取り出した。


「最後に、このひと言を届けましょう」


そう言って彼女が箱の中を見つめる。三人で目配せをしてから、俺と夏希も一歩前へ。


「──ありがとう、青春を一緒に彩ってくれて」


三人の声が一つになり、夜風に乗って屋上の空へ溶けていった。


──恋文バトルは終わった。でも、俺たちの物語はまだ続く。


──つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る