第008皿 隠し味の真実は鍋の中:やっぱりカレーは金曜日だよね〈市ヶ谷エリア〉
靖国神社が在る〈市(ケ/ヶ)谷〉エリアには防衛省も位置している。逆の言い方をすれば、市谷と言えば防衛省なのだ。
さて、この界隈において、靖国通りと外濠を繋いでいる「一口坂」に面しているのが『やっぱりカレーは金曜日だよね』というカレー専門店である。
店名に入っている「カレーは金曜日」というのは、海上自衛隊では、長期に渡る海上生活における曜日感覚の狂いを避けるために、毎週金曜日にカレーを提供するようになった事に由来しているそうだ。
もっとも、調べてみたところ、この〈金曜カレー〉という通説には実は根拠がない、との事である。
とまれかくまれ、事の真偽はいったん括弧に入れておくとして、今現在、基地ごと、あるいは、艦隊ごとに、個別のカレー・レシピが〈海自カレー〉として、ご当地グルメの如く存在し、レトルトとして販売されさえしているのは紛れもない事実である。
ところで、この防衛省のお膝元に在る『やっぱりカレーは金曜日だよね』さんでは、月替わりで『艦隊カレー』というメニューが提供されているのだが、これが、少なくとも月一で、この店に通うカレー・ラヴァー達のモチベーションになっている事は想像に難くない。
そして、八月の「艦隊カレー」は、護衛艦「たかなみ」の「護衛艦たかなみ特製カレー」で、書き手は、あえて金曜日にこの店を訪れ、八月の艦隊カレーを大盛りで注文したのであった。
『防衛省』のサイトを参照してみると、艦隊メシや部隊メシのレシピが公開されており、その中の「海自カレー」という項目には、全〈六十九〉種類のカレー・レシピが見止められ、二〇二五年八月に『やっぱりカレーは金曜日だよね』さんにて提供されている「たかなみ」のカレーのレシピも確認できる。
そのページを参照すると、材料から作り方まで実に事細かく書かれており、 「たかなみ」のカレーは挽肉のカレー、いわゆる〈キーマカレー〉で、実際に店で提供されていたのもキーマ・カレーだったのだが、この材料表によると、その肉は牛であることも分かる。
防衛省のページに見止められる写真内の「たかなみキーマカレー」は、銀色のステンレス製の皿に、左半分のキーマ、右半分のライスという物だったのだが、『やっぱりカレーは金曜日だよね』さんでは、艦の鼻先に紅白幕があり、「501」の番号が入った独自の潜水艦皿を使っており、この容器という点でも、オリジナルの「たかさごカレー」とは違っていたのだが、それだけではなく、『やっぱり』さんでは、カレーと米の間に輪切りにされたナスが添えられている点にも違いがある。
ちなみに、『やっぱり』さんの器の中には、オリジナルにない唐揚げも見止められるのだが、これは『やっぱり』では、金曜日に〈唐(空)揚げ〉の無料サービスがあるカラだ。
さて、たかなみカレーのオリジナル・レシピを見てみると、面白い調味料が使われている事も分かった。
赤ワイン、とんかつソース、ケチャップなどに加え、なんと、〈インスタントコーヒー〉が使われているらしいのだ。
『やっぱり』さんのキーマカレーがこのレシピ通りの代物かどうかの真相は〈鍋の中〉で、実際、味わっている時には、コーヒーが入っている事には書き手は全く気付き得なかった。
とまれ、答え合わせのような物なのだが、このレシピのおかげで、隠し味の存在を知れたのは面白き事であるように思った書き手であった。
〈訪問データ〉
やっぱりカレーは金曜日だよね:市ケ谷エリア
八月八日・昼・十二時四十五分
艦隊カレー:護衛艦たかなみ特製カレー・大盛り:一四〇〇円(QR)
〈参考資料〉
『神田カレー街公式ガイドブック2025』、五十七ページ。
〈WEB〉二〇二五年十月六日閲覧
「カレーレシピ 一覧|海上自衛隊レシピ」、『防衛省』
「護衛艦「たかなみ」型」、『海上自衛隊』
「潜水艦のカレー皿」、『錦松竹』
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