天秤世界の変革者
キサラギ カズマ
エピローグ 地球変容の胎動
アリスは、自らが生まれ育った故郷、アル・エテルナを見つめていた。
かつて争いもなく平和だった、その地は、今や一人の暴君に支配され、その野望と強欲が世界を深い混乱へと突き落としていた。
「私が、終わらせなければ」
アリスは固く決意する。
この手で、平和な世界を取り戻すと。
そのために王を打倒すべく、彼女は密かに力を蓄え、民衆の中に希望の火を灯し、同志を募った。
・・・・・・だが、王の力は想像をはるかに超えていた。
彼の操る異質な能力――空間を歪め、全てを飲み込むその力――の前に、アリスたちの反乱は脆くも崩れ去る。
“敗北”
それはアリスにとって、初めての経験だった。
王の冷酷な眼差しが、反乱軍を奈落の底へと突き落とす。
空間がねじれ、彼女たちの身体を強引に引きずり込む。
意識が途絶える寸前、アリスは、共に戦ってきた同志であるカインを、自身の空間干渉能力で王の手が届かない別の場所へと飛ばした。
そして、カインを除いた彼女たちは、故郷から凍てつく氷の世界へと追放されたのだ。
一方、別の次元、“地球”と呼ばれている世界へと飛ばされたカインは、その星に微弱ながらも確かに存在する不思議な力を感じ取っていた。
故郷の世界では当たり前だったその力が、この地にも息づいていることに、彼はかすかな希望を見出す。
身を隠しながら地球の文化に触れたカインは、ひそかに一部の人々と接触を試みた。
彼らの中には、抑圧された感情や強い願望を抱える者がいた。
カインは自身の知識と、わずかな力を用い、彼らの潜在能力を目覚めさせ、超常的な力を与えていく。
それは、アリスを救い、故郷を取り戻すための、カインなりの計画の始まりだった。
しかし、その行為は予期せぬ事態を引き起こし始めていた。
遠く離れた氷の世界では、アリスの強い感情が、その地に満ちる何らかの力と呼応し、静かに異変を引き起こしつつあった。その影響はごくわずかな空間の亀裂を通じて、別の次元へと漏れ出し始める。
氷の中で孤独に時を過ごすアリスは、遠い星で彼女を救うため、動き始めたカインの存在を知る由もない。
そして、アル・エテルナ、地球、二つの世界に静かに忍び寄る新たな脅威の影に、まだ誰も気づいていない。
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