よこはま物語 Ⅳ、ヒメたちのエピソード (物語シリーズ②) 🅽🅴🆆!
✿モンテ✣クリスト✿
ヒメと明彦8、後藤恵子と斉藤慶子編
第1話 台湾の連中
新横浜駅から中華街に戻った。良子が別れ際に、明日の朝はH飯店に行って、おバア様、王さん、徐さん、吉村刑事に今日のことを説明に行かないといけないわね?みんな渋い顔をするだろうなあ、と言う。そりゃあそうだよ。東の台湾の連中との揉め事が西に飛び火したんだから。でも、いずれにしろ、西の台湾の連中から十名、こっちに増援部隊が来るのだろうから、備えなければいけないけど。
朝早くH飯店に行くと、もうみんな集まっていた。飲茶が丸テーブルに並んでいた。良子から説明があったんだろう。林田のおバアさん、王さん、徐さん、吉村刑事が腕組みをして、渋柿を食べたような顔をしている。みんな唸っている。私が部屋に入って来るのを見て、おバアさんが「後藤巡査、ここにお座り。飲茶をお食べ」と彼女の隣の席を指さした。
「誘拐された女たちを救出しなかったとしても、いずれにしろ西の台湾の連中の増援部隊十名がこっちに来るのは変わらないんだろうね。でも、人質救出という東で起こったことが西でも起こったのだから、西でのことは、横浜が関与していると強く疑うだろう。ファンファン、こうなったら、お前のパパに事情を説明しないといけないね。今日、私が出向いて説明する。お仕置きされるよ」と言う。
「お婆さん、しょうがないですね。お仕置きくらい覚悟してます」
「ファンファン、お前だけじゃない。お前と吉村刑事のことも説明しないといけない。お互い知らなかったとはいえ、高校3年生の未成年のマフィアの家の娘と肉体関係を持った刑事ってさ。吉村さん、ファンファンのパパは娘を溺愛している。まだ処女だと信じ込んでいるんじゃないか?吉村さん、ドラム缶にコンクリ詰めにされて、東京湾に沈められるかもしれんよ?」
「・・・冗談ですよね?」と刑事。
「しごく真面目な話だ。覚悟を決めて、刑事を辞職、ファンファンと結婚して、張の家を継ぐしかないかもな」
「・・・まあ、ファンファンと結婚するのはやぶさかじゃないですが・・・」
「あ!浩司!今、言ったね?私と結婚って言った!良いんだね?結婚しても?今から区役所に行こう!籍を入れよう!」とファンファン。
「あ!先を越される!ファン!吉村さんを今晩貸して!」と良子。ファンファンといい良子といい緊張感がないよなあ。
「吉村刑事、ここの台湾の連中はあんたがこの事件の裏を知っていると思っている。誰が在日米軍郵便局に人質の女がいるって話をあんたに通報したか、知りたがっている。あんたもヤツラに捕まるかもしれないよ?注意をおし。ファンファンと結婚するのはいいけど、この子がさっそく未亡人になるのを見るのは忍びないからね」
私は昨日の子が気になった。誘拐されて1日という佐藤久美子だ。私はみんなに佐藤久美子の話をした。
・・・「あ!でも、また秋田に連れ戻されるの?」警察に保護されたら、身元を明かさないといけない。そうしたら、両親が迎えに来て、秋田に連れ戻されるんだ。そして、また、叔父に犯される。
「何か、事情があるの?」
「・・・家出したんです。上野で途方に暮れていると、男性が家に泊めてくれると言ってくれて。それでお酒を飲まされて、気がついたらここにいました・・・あの、家出の理由は、叔父に強姦されたからです。僻地の村ではよくあることです。だけど、家に連れ戻されたら、また叔父に犯されます!」
「あなた、名前は?」
「佐藤久美子と言います。高校3年生です」
「身元を証明する学生証とか持っている?」
「荷物は上野の男のところにあると思います。私の持ち物はこの衣服だけです!」
「・・・ちょっと考えさせて。今は、何もできない。でも、何か手があるはず。できるだけ、身元をシラを切って言わないでおいてね」
「ハイ、助けてもらえるんですか?」
「約束はできないけど・・・今は、警察に保護してもらうしかないわね。でも、そういう事情でも警察は未成年のあなたを親元に送り返すしかないの。兵庫県警が扱うのは、この誘拐事件と人身売買だけ。それで、秋田で改めて強姦事件として刑事告訴はできるけど、そういう僻地の村だと村民同士で隠し合うんでしょう。告訴もできないかもしれない。そうなると、また家出するほかないわ。う~ん、考えてみる。諦めないでね」
「わかりました。でも、ここから救い出していただいただけでも十分です。ありがとうございました」・・・
「こういう事情ですから、私はまた神戸に行って、兵庫県警の斉藤慶子巡査に相談したいと思っているんです」
「やれやれ、ファンファンと良子のお転婆二人でも手を焼くのに、後藤巡査、あんたもかい?こっちの尻に火がついているってのに、人助けをしたいと?」
「佐藤久美子は叔父に犯されているんです。私も高校の時にワルに輪姦されました。強姦は許せません!兵庫県警は、誘拐並びに人身売買未遂事件として捜査するでしょう。久美子の言う上野の男も捜査されるでしょう。でも、兵庫県警の管轄はそこまで。後は、久美子は家出した高校3年生の子です、当然、身元引受人は両親です。秋田から兵庫に呼びつけて、身柄を両親に渡す。久美子が叔父の強姦を刑事事件としたいなら、秋田で改めて強姦事件として刑事告訴はできる。しかし、僻地の村だから村民同士で隠し合う可能性が高い。告訴もできないかもしれない。叔父はまた久美子を犯そうとするかもしれない。そうなると、また家出するほかないわ。イタチごっこになるでしょう」
「何か考えがあるのかい?」
「神戸に行って、斉藤慶子巡査に相談します。まず、久美子と面会しないと。遠縁の従姉妹とかウソをつきます。久美子から秋田の村の話を聞きたいんです。叔父が姪を近親相姦する村ですから、久美子の両親の家だって何かあるでしょう?父親だってなにかしているかもしれない。まずは叔父が姪を犯したというのでも家の恥。それをネタに脅します。私が秋田に行って、身元引受人の委任状と私を身元引受人とする同意書を取り付けます」
「親切にもほどがあるね。後藤巡査、あんたは徐と結婚するんだろう?新婚家庭に高校3年生の娘を引き取るつもりかい?」
「・・・ええっと、それは・・・考えていませんでしたね」
「高校3年生の子ねえ。なんなら、この店で働かせるか?それで、秋田の高校は止めさせて、こっちの夜間高校にでも通わせるか?王、どうだね?この店の人手も足りないことだし?」
「問題ありません。女給はもっと欲しかったところですから。系列店でも人手不足ですし、店の寮も空いてます」
「よし、決まった。後藤巡査、それでいこうや」
「ありがとうございます」
つっ立って聞いていた永福が「大奥様、私もレイニーと一緒に神戸に行きたいんですが。レイニーのボディーガードもしたいし、神戸の台湾の連中の動きを探りたいんです。十人の増援ですからね。飛び道具も出てくるかもしれない。今度は、誰か死ぬかもしれません。客家の知り合いが神戸におりますんで、いろいろと聞き込みをしてきたいんです」と言う。
「王、かまわないかね?」
「問題ありません。早速、神戸に行け。それで、明日からの土日を出張扱いにする。ハネムーンと洒落込んでもいい」
私は永福と顔を見合わせた。ハネムーン。高校3年生以来、7年間、思っても見なかったこと。神戸のホテルで永福に抱かれる?あれ?今週は危険日だったっけ?子供ができちゃうかもしれない。こんな席なのに、想像したらあそこがジワっとなった。顔が赤くなった。
「レイニー、レイニー!あなた、今、エッチな想像をしたでしょ?悔しいわ。ファンと吉村刑事、レイニーと徐さん。私だけ爪弾きじゃないの!レイニー、徐さんを貸して!」と良子が言う。
「王、これはどうにかならないか?」とお婆さん。
「やれやれ、良子嬢ちゃんの件は、問題ありません、とは言えんです」と王。
「王さん、そんな関心ありません!って顔をしていていいの?おバア様、王さんの自宅の住所を教えて!家に押しかけて、王さんの娘さんと友だちになって、悪いことを教えるわ!」と良子。
「やれやれ・・・」
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