お互い立派になって再会しようと約束した彼女に会いに行ったらその彼女が堕落しまっくていた件
黒薔薇サユリ
第1話 過去の約束から出会った彼女は
「
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俺は車の窓から顔を出し、最愛の彼女遥乃に別れを告げる。この日俺は、父さんの仕事の都合で遥乃と離ればなれ、そこそこ離れた遠き場所へ、引っ越すことになっていた。俺が遥乃と別れる前にした約束、「お互いがお互いに見合うレベルに成長して再会しよう」そんな、約束を胸に俺は地元を離れ、遠き地へ引っ越した。
そんな劇的な別れから数十年。俺は教師となり、遥乃と離れ離れになったこの地元へ帰ってきた。噂によれば、遥乃はまだ実家住みとの事で、今日は休日、運が悪くなければ遥乃に会えるはずだ。ちなみに俺と遥乃は、小中と続く幼馴染。親同士はあまり接点がないために、親同士はそこまで仲がいい訳では無いけれど、俺と遥乃は仲が良かった。ただ、中学の頃はスマホとか言う文明の利器が主流じゃなくって、遥乃と連絡を取るに取れなかったのが痛手だった。ハガキの手もあったけど、ほんとよくわからないプライドで使っていなかった。
「それはさておき、だ」
ついに来た遥乃の家。こう思い出してみても、ほとんど変わりないな。少し家の外壁が古くなってるな、程度で昔のままだ。
感慨にふけりながらも、
「はい」
「すみません俺――」
「セールスなら結構です」
それだけ言われ、インターホンのガチャ音と共に、あちら側の音は途切れた。
「いや、ちょ」
慌ててもう一度インターホンを押す。
「あの、セールスなら――」
こんなんになるんだったら、スーツ着てくるんじゃなかったな。普通に大きな誤解を生んでいる。
「セールスじゃないです。俺です」
「えっと、オレオレ詐欺?」
「違います。中学の時、娘さんと仲良くしていた」
「遥乃と?あ〜、なんか見覚えある。えっと……あ!
「そうです。三嶋悠斗です」
良かった。俺の事覚えててくれたみたいで。そんな安心と共に、口から息がこぼれる。
「わざわざ来たってことは、遥乃?」
「はい。遥乃さんって、今お時間大丈夫そうですか?」
「遥乃ね〜。まあ、大丈夫だとは思うけど」
遥乃に関して、なんだか頭を抱えたような声を出すおばさん。頭抱えたような感じではあるけど、なにか大事のような感じではないし、風邪をひいてるとかそんな感じかな。
「今日は帰ってきた、て感じのちょっとした挨拶なので、ほんの少しでいいんですけど」
「うん。まあ、とりあえず会ってみて」
諦めたような声と共にガチャっと、話は切れ玄関扉が開いた。それと同時に、遥乃のお母さんが出てきた。やはり、いつ見てもお若い。
「お久しぶりです。これ、粗品ですが」
「わざわざありがと。じゃあ、これ」
「えっと、鍵?」
粗品を渡したところおばさんから、用途不明の小さい鍵を貰った。
「あの子の部屋いけばわかるから、行ってみて」
わけも分からないまま階段を上がって、遥乃の部屋の前にまでやってきた。遥乃の部屋の扉に手をかけようとしたら、ちょっとした鍵が目に入った。つまりこの鍵は、これに使えということだ。
にしたって、なぜ鍵が付いているんだ。遥乃の思春期時代なにか、両親と確執でも生まれたのかな。でもそれだと、おばさんが鍵を持ってるのはおかしいか。
何が何だかわからないけれど、とりあえずノックをして遥乃に声をかけてから鍵を開け、遥乃の部屋に入らせてもらった。
「ひさし――」
「ひいぃ!だ、誰ですか?また、更生施設の人ですか?それなら私、死んでも行きませんから」
「えっと、遥乃?」
「うっわ、急に呼び捨てとか気持ち悪い」
この子は一体?という言葉が俺の頭をよぎる。暗くてよく見えないけれど、内装はほとんど変わりない。つまり、遥乃であってるはずだ。それにしたって、誰だ。昔の遥乃は、少し抜けてるとこはあれど、真面目でこんなニート歴数十年みたいになる子ではなかったはずだ。
「早く帰ってください。ここは、私のサンクチュアリなんだから!」
昔と変わらない声で俺に向かって、しっしと手を振る。
「いや、俺は出てかないから。久しぶり、遥乃」
この変わり果てた存在は気にせず、その場にどかっと座り込む。というか、とりあえず布団をどけて顔を見たいな。
「まずは、起きろ!」
「やめて!セクハラ!痴漢!」
少々心苦しいけれど、布団を引っペ返し遥乃のご尊顔を拝む。顔は昔と変わらず、おばさん似の綺麗な顔。どうやら、童顔は遺伝みたいだ。
「今度こそ、久しぶり遥乃」
「だから誰?」
「暗いからか。なら、これでどうだ?」
「怖いよ」
スマホのライトで下から顔を照らしたけど、普通に引かれてしまった。
「わかんない?俺なんだけど」
「だから誰。私にこんな顔のいい、胡散臭い知り合い居ないですよ」
「お、いい顔か。嬉しいな。そう言う遥乃も可愛いよ」
「無敵か」
良かった今でも遥乃のお眼鏡には叶うみたいで。とはいえだし、そろそろ名前を打ち明けるか。
「遥乃、入るわよ」
「お、お母さん。この人誰、更生施設の人?前にもう呼ばないって、言ってたじゃん。ほんと怖いんだけど」
「何言ってんの、三嶋くんでしょうが」
「え、ゆう――」
「あ、これ麦茶だけど」
「ありがとうございます」
俺からじゃなく、おばさんの方から打ち明ける形になってしまった。まあいいか。遥乃は固まってるけど、思い出してくれてそうだし。
「えっと〜お母さん、電気つけて」
「はいはい」
おばさんが遥乃に言われ部屋の明かりがつけられる。電気のついた眩しい部屋で、遥乃は寝巻きのまま俺の前に正座で座って、髪を整えてから口を開いた。
「ゆ、悠斗くん。久しぶりー、スーツ似合うね」
取り繕うように苦笑いをする遥乃の髪がピンッとはねる。
「ふー」
苦笑いをした遥乃は一度深呼吸。
「ごめんごめん!見捨てないで!約束守れないクソ女だけど、見捨てないで!」
諦めたかのように深呼吸をした遥乃は、一気に涙目になった。かと思えば俺にすがりついてきた。
「悠斗くんを忘れてた訳じゃないの!唯一の心の拠り所ではあったの!相手がいる言い訳だったから!このままだと48歳で、生きていけないって叫ぶことになっちゃうから!」
すっごいいまさらーな話だけど、こいつ何かあって今ニートだな(現在23歳)。まあいいか、それでも俺の思いは変わらない、はず。今の遥乃を見てると、少々不安になる。
「一旦落ち着きなって遥乃」
「悠斗くん?」
俺にすがりつく遥乃を一旦引き離して、手を取る。
「今の遥乃には少しびっくりしたけど、大丈夫。俺と一緒に真人間になろ」
「真人間?やっぱ更生施設の人!?やだー!」
とんでもねぇバケモン生まれてんじゃん。
「違うって、俺は今教師やってんの。今日は、あの日の約束を果たしに来ただけ」
「え?てことは、けっこ――」
「それは一旦保留で」
事実を突きつけると、遥乃はさっき同様に俺へすがりついて、大量の言葉をあびせてくる。
「と、とりあえず、しばらく遥乃と過ごして考える」
「ほんと?じゃあ、私頑張る。社会復帰はわかんないけど」
「それは頑張れよ。とりあえず、俺は言うだけ言ったし帰るよ。とりあえず連絡先だけ交換しよ」
昔はなかったけれど今はある。連絡手段。これなら、すぐに遥乃と連絡が取れる。嬉しいことこの上ない。
「そんじゃ、またどっかで」
「私、いつも暇だから、いつ来てもいいよ」
それはわかってるよ!
「こいうと悪いけど、とりあえず遥乃は少し気持ちを落ち着けろ」
「うん。わかった」
顔が好みなだけあって、ちょっと怒ってしょんぼりされると心にくるな。
「今度こそ行くわ」
「玄関まで見送るよ」
フラフラと立ち上がった遥乃と一緒に、玄関へ降りる。
「そんじゃ、また。おじゃましました」
「じゃあね、悠斗くん。見捨てないでよ」
「わかってるって」
なんだか、思い描いていた再開とは違ったし、遥乃も変わるに変わってたけど、まあ元気そうだしいいか。とりあえずは、しばらく見守ってあげよう。
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