第6話 投票無効
「けど、これはゲームでしょう? だったら、クリア不可能な設定にはしてないはず。で、トップが同じ票数で並べば複数指定が可能なのはさっきわかったわね。つまり、生者が2人なら、9日あれば全員の死者を指定することができるわ」
生者が2人なら、死者は17人。2人で票をわけて投票し続ければ、1日に2人を指定できるわけだ。そうしたら、2かける9で18になるから9回繰り返せば、17人全員を指定できる。だから、宮部は9日あればいいって言ってるんだな。
「だから、5回、来週の月曜日までね。そこまでは白紙で投票していても、問題ないはずなの」
宮部の話は説得力があった。樫村も黙っている。
「いいかしら? 樫村さん。今回は全員で何も書かない。ということで」
「……いい」
樫村はうつむいて答えると、ストンっと席に座り込んだ。
宮部は全員にもう一度、「全員で何も書かないでいくわね」と念を押すように言ってから黒板へと向き直った。
「相談は、終わりました」
そう、宮部が発言すると、ブツッと音声が入ると同時に、阿久津先生が動き始めた。
『では、投票を開始します』
放送音声が告げると、阿久津先生が昨日と同じように紙を配っていく。
『そうそう、名前の記入間違いを防ぐために、名簿をお出ししましょう。必要な方は確認の上、記入をお願いします。今回は必要ないかもしれませんがね』
黒板の隣のスペース。お知らせとかが貼ってある廊下側のところに、ぴらり、とスペースいっぱいの白い紙が現れた。大きいおかげでオレの席からも十分書いてある文字が読める。枠は横5枠、縦4枠だ。
廊下側の席の前から、一 消子、森本 恵美、藤田 孝、樫村 麻衣。
その隣が、沢 昌磨、斉藤 良夫、白川 玲香、佐藤 麗。
次が、鈴木 慎吾、林 恭子、坂石 信淵(オレ)、竹井 俊明(トシ)。
その次、寺内 雄介(ユウ)、山岸 シヲリ、江川 利恵、岡田 渉。
最後窓側が、宮部 清香、杉本 澪、金子 俊一郎、土屋 宏。
一 消子の枠は赤い線でバツがついていた。
必要にならないといいな。ルールとしては絶対に使うことはわかっていても、そう願っていた。
昨日と同じように箱がでてきて、ひとりずつ箱に紙をいれていく。
あのドゥルルルという音楽が流れ、黒板が一度全部きれいになった。
そして、無効。という字が大きく浮かび上がった。
全員ちゃんと何も書かずに投票したんだ。
ホッとした。
誰かの名前がでてきたらどうしようと思ってた。
これで何事もなく今日を終えられる。
『では、また明日の終礼でお会いしましょう。さようなら』
ブツッ!
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