深紅のダイヤ
@Rimi3
第1話 少年コバルト
誰でも小さな頃は夢を持っていただろう
いつからかそういう夢を日常を送ることで忘れてしまう人が多くなるものだ。
ハランという街に住むほとんどの人はもう夢という単語すら忘れているかもしれない。
ゴロツキやその日暮らしの冒険者が多いこの街じゃ、誰もが将来どころか明日の予定すらないまま日々を送ってる人が多い。
まだ12歳になったばかりのコバルトは、そんな中将来を諦めず毎日を一生懸命に送ってるこの街じゃとても珍しい子供だ。
父は三年前に隣との国の戦争に戦いに行って死んでしまった。
とても強くて国の代表的な兵士だったらしいが、
圧倒的な数の軍勢に囲まれて、部下を逃がすために殿をつとめて戦死した
お陰でけっこう部下たちは逃げ切って助かったらしい。
母はその後、一人で働いて家族を養ってくれていたが無理をして身体を壊し去年亡くなった。
よくありがちな不幸な身の上話だが、実際にそれを経験することになったコバルトについては同情してしまうような境遇だ。
母は生計を立てるために仕事を無理して頑張っていたが、それでも毎月すこし足りず借金があったみたいだ。
亡くなった後その債権が色んな人に渡り歩いて大きな金額になってしまい、身売りのような形でこのハランの宿で働くことになった。
国の法律の事もあり、無給で働かせていることがバレるとまずいらしく一応給金は月に銀貨2枚となっている。
実際には宿代、食事代、借金の分割払い、なんやかんやとと差っ引かれて銅貨5~6枚ぐらいしか渡されてない。
ダタン 「おい早くしろ!客を待たせるな!」
コバルト 「すいません!もうちょっとで終わります」
客 「大丈夫だよ。そんなに急がなくても」
コバルト 「いえ、もうすぐ運び終わりますから」
怒鳴られながらコバルトはいつも通り客の荷物を荷馬車に載せていく。
ダタン 「すいません、お客さん。コイツほんとにとろくて」
客 「いやいや、大丈夫だよ。けっこう荷物多いからね。これあとであの子に渡しといてくれる?」
ダタンはニッコリしてコバルトへのチップを受け取った
ダタン 「アイツも喜ぶと思います。ありがとうございます」
ダタン やったぜ!今日は何処に飲みに行こうか...
チップはコバルトに渡ることなくいつものようにダタンの飲み代に消えていくことを本人は知らない。
コバルトは少ないながら毎月貯金をしていつか世界中を旅してみたいと夢を見ていた。
よく母が聞かせてくれてた…今でも思い出す故郷の国の様子や、宿に泊まりに来る外国のお客さんの話、冒険者が聞かせてくれる英雄譚のような話に想いを馳せていた。
コバルト いつか自分で世界中を回ってみたいな…
冒険者に登録できるのは成人とこの国で認められる15歳からだ。コバルトはそれに向けて登録料や装備にかかる費用、冒険者になるための知識やスキルを学ぶためにかかる費用を既に調べていた。
最低でも銀貨30枚
この世界の通貨は銭貨、青銅貨、銅貨、銀貨、金貨、聖金貨の6種類ある。
それぞれ10枚がより高価1枚と同価値である。
コバルト まだまだだなぁ…でも装備はお父さんが残してくれたアレがあるから…後は防具ですむしね
汗を拭きながら心の中で呟き、宿の屋根裏部屋の方を一瞥する。そこは彼の部屋であり、そこに立て掛けられているものがコバルトの宝物だった。
実際、それを売れば母は借金する必要もなかったのかもしれない。でも母は頑として売らずにいたのだ。
母が亡くなって借金取りがきたときも、それを寄越せばチャラにしてやるといわれた。
コバルトはそれを断り、結局今の状況に至ったわけだ。
コバルト あの槍は見た目そこまで立派じゃないけど、お母さんがお父さんの大事な形見だといってたし。そういえば、戦場で死んだ父さんの槍がなんで
ダタン 「おい!いつまで休んでるんだ!」
怒鳴られたコバルトは考え事を後にして、また次の雑務のために厩舎に急いで向かう
ダタン 「ここの掃除ちゃんとやっとけよ。」
この仕事は本当はコバルトの仕事ではないのだが、たまにこの男は自分がサボりたいがために押し付けてくるのだ。
コバルト 「自分の仕事も残ってるから、今日はちょっときついです。ダタンさん」
ダタン 「おまえがトロいからだろーが!言い訳すんな!」
バシッ
理不尽にアタマをはたかられる。
コバルト「……はい…」
そしていつものようにダタンは、西日に照らされながら飲み屋街の方に向かっていった
コバルト はぁ…早く成人して一人前になって自立したいなぁ
そうして無駄に増えた作業を黙々とこなし、大分遅くなって宿の食堂に重い足取りで向かった
一応、賄いが与えられていて、食堂のすみに彼の分が取りおかれているのだ。
コバルト !? え?
無い。いつもの場所に彼の食事はなかった
コバルト なんで…え?誰か間違えて食べちゃった?
ドット「今日はカツだぞ!ボウズしっかり食ってもう遅いから早く寝とけ」
雇われ料理人のドットが洗い物をしながら話しかける。いや、その肝心のカツがない。
周りを見渡すと食堂の隅で飯を食ってる冒険者?浮浪者?がそこにいた。
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