第44話
朧げな意識がゆっくりと浮上する感覚。
あぁ……これ、もうすぐ起きるな。
夢の中にいるような感覚である一方で、夢にはないたしかな五感に、あらゆる刺激を受けて覚醒を促される。
外の車の音だとか、瞼越しに差してくる日光。毛布の温かみだってそうだ。
伝わって来る感覚全てが俺に起きろと訴えかけてくる。
だだ……今日はいつにない謎の感覚があった。
顔いっぱいに広がる柔らかな感触。
瑞々しさというより、しっとりと押し込めば沈み込みそうな低反発性を帯びた柔らかさ。それに伴って甘く安心する香り。
目を開くのすら億劫な俺は、ソレが何かもわからないままスリスリと顔を押し当てて、謎の感触を堪能し――――。
「あのぉ……センパイ?」
天……否。頭の上から聞き覚えのある声が振って来た。
刹那、全身を強張らせる俺。
どんどん意識は鮮明になっていき、記憶も明瞭になり始める。そして昨夜の記憶から自分が今、どのような状況なのかも大方の予想がついてしまった。
11月だというのに冷や汗が止まらない。
このまま寝惚けた振りしとけば誤魔化せたりしないかな……。
などという俺の浅はかな考えは甘かった。
「起きてますよね?」
「…………はい」
目を開けると、朱色が混じった茶色……俗に言うきつね色の布地が視界全体を覆っていた。
そのまま視線を上げると、予想通りの人物の顔と対面する。
パッチリと大きな瞳に形の良い小さな鼻。唇はぷっくりと瑞々しく、やせ過ぎず女性らしい柔らかな丸みだけを残しつつシュッと締められたシャープな顎が顔全体のパランス整える。
贔屓目抜きにしても美少女と呼べる女の子。俺の彼女である、如月澪が困惑と微笑みを半々ぶブレンドしたみたいな表情で俺を見下ろしていた。
「おはようございます、センパイ」
「お、おはよう……」
客観的に見れば、俺は年下の彼女の胸に顔を埋めてバブミを感じていた、ヤバイ男である。
ちなみにだが今も俺の視界の下の方では、澪の巨大とはいえないまでも十二分に大きな膨らみが押し上げる、狐耳パーカー型のパジャマの布地が映っている。
「夢中になってたようですけど、好きなんですか? おっぱい」
「いや、それは……知らなかったというか……」
「どうなんです?」
「は、はい……その、ごく普通の青少年と同じくらいには…………」
ふーん……と興味ないように相槌を打つ彼女の、質問の意図が読めない。
俺はいったいどうなってしまうんだ。
「なら――――」
「っ!?」
そう言うや否や。視界が大きくブレた。
俺の頭の後ろの方……後頭部布巾に両手を回すと、一瞬悪い笑みを作った途端である。一気に己の胸元へと抱き寄せたのだ。
再び彼女の胸との邂逅を果たす俺の顔面。
先刻までの、何かわからないけど気持ちいい……とは異なり、彼女の胸に飛び込んでいるんだという事実が、より一層胸の高鳴りが増す。
「ほぉらセンパイ。大好きな彼女のおっぱいですよぉ」
「ちょ、澪っ。その恥ずかしいから……」
「とか言っちゃって、全然抵抗する力入ってないじゃないですかぁ」
「…………」
その後俺は澪の気の済むまで揶揄われ続けた。
役得ではあるが、交際1日目にして墓場まで持って行きたいレベルの黒歴史を作った俺の先が思いやられる。
【あとがき】
拙作をお読み頂きありがとうございます。
面白そう、続きを読んでみたいと思って頂ければ
非常に励みになります!
現在、本作はカクヨムコン11に参加中。よろしければ評価のほどして頂ければ、狂喜乱舞します。
明日は19時40分ごろに投稿予定です!
【蛇足】
今回書き切って、なんかいつもより文字数少ないなぁと思ったり……。
ストーリー重視せず書きたいシチュだけ抽出すると、案外これくらいになるのでしょうか。
読み手様がどれくらいの長さの文が、読んでて楽しいのか研究する日々です(汗
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